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[コメント] 風と樹と空と(1964/日)

愉しくてとてもいい作品。日活期の吉永小百合で1本だけ選ぶならこれ取って逃げたい。主題歌も秀逸、コメディなのに劇伴がマイナーという組合せがこの時代らしく。谷内六郎の寂し気な挿画もそうだ。
寒山拾得

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津軽弁で織りなされるラブコメ。仲間でわいわいで汽車で上京する、これも集団就職というのだろうか。「私は驚くと人を蹴飛ばす癖があるんです」「馬みたいな人だな」。吉永が酔っ払って通りがかりの酔漢と高校三年生を唱和し、告白しようとする浜田光夫に「なんでしゅか」と小首傾げる件が切ない。最後に二人が別れる話は珍しく、印象が深くなった。

良くも悪くも石坂洋次郎らしい作品で、理路整然たる長科白の応酬という手法は、相変わらず調子が狂う処が出てくるが、吉永のセックス談義など愉しく、饒舌に男をやり包めるのは女の必須事項という気がしてくる。吉永のヒップが数多く撮られる作品だが、青いワンピースと相まって健康的な印象ばかり。松尾演出はスピーディでメリハリがあって、ラブコメは珍しいのだろうけど向いていたのではないだろうか。お手伝いさんも一緒に食卓につくオープンな社長宅は石坂らしいのだろう。

本作は大楠道代荒木一郎の映画デヴュー作。大楠はベッドで鼻から煙草の煙吹き、荒木は吉永におちんちんと云われて泡喰らう。彼のライバルの肉屋の高島稔もいいキャラで、最後の野球のコメディも美しい。公園の池に野呂圭介が二度落とされる終盤のよく判らないナンセンスも妙に面白い。

平山こはるが可愛い。本作だけの出演だろうか。和田浩治と結婚して横浜まで日帰りの新婚旅行をしたという逸話が印象に残る。上野でミロのヴィーナス展、首都高は延伸中。マイナーな主題歌は高度成長との距離を測りかねているようなニュアンスが感じられる。ラストの野球もキュートに決まった。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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