[コメント] ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(2006/米)
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笑いというのはいくつもの種類に分かれるが、世界的にみるとどぎつい笑いはイギリスに多い。モンティ・パイソンを例をあげるまでもなく、民族を笑い、性差別を笑い、貴族を笑う。何でもかんでもこき下ろしつつそれを笑いに変えてしまうのがイギリスと言うお国柄なのだろう。ただし、それだけ無茶やってあまり深刻にならないのはアメリカとは違って、笑いは笑い。ということで裁判沙汰にはならないのもやはりお国柄によるもの(『リトル・ブリテン』というお笑い番組で「もし同じギャグをアメリカでやったら」というコーナーがあって、あっという間に警察に引っ張られたというギャグもあった)。それ以前にイギリスのジョークの最大特徴は一番馬鹿なのは、こういう笑いを取っている自分自身である。ということを明確に画面に出しているからだと思う。
そういう意味では本作は見事なブリティッシュ・ジョークに沿ったもので、「ユダヤ人嫌い」を公言してはばからないボラット役のコーエン自身がユダヤ人であったり、敢えて自分自身を揶揄するようなことを無邪気な顔をしてやったりと、分かってやってることは理解できる(本人が「カザフスタン語」と言っている言語は全部ヘブライ語だとか)。
ただ、理解はできるが、それを受け入れられるかどうかというのは別な話。
わざとトンチンカンな質問をして、インタビューされている人たちが凍りつく瞬間や、どう考えても人道的にまずいだろ?という突撃レポートを次々にやってるのを観させられると、なんかいたたまれない気持ちにさせられてしまう。たぶん私はこう言ったどっきり企画が苦手なんだろう。と、改めて思わせてくれた。
でも何よりも、あのホテルでの格闘シーンがなあ…さすがにあれはビジュアル的に破壊力あった。というか、モロに気分悪くなった。
これ受け入れられる人はいるだろうし、笑える人もいるだろうけど、少なくとも私には無理。性格的に受け入れられない作品ってのは確かに存在する。そのレベルが分かっただけでも一つの成果としよう。少なくとも観た意味はあった。
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