コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] フランドル(2006/仏)

撮影は良いところと悪いところが混在しているが、ブリュノ・デュモンのスカした演出ぶりは堂に入っていてとても面白い。
3819695

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







序盤はいろいろな疑問を抱かせる。それは物語に対する疑問というよりも形式に関するもので、具体的には「なぜこれがシネスコなのだろうか」「いっさい音楽を使用しないというのは確かに意欲的だが、果たしてそこまでこだわる必要があるのだろうか」「クロースアップの多用は失敗ではないか」といったものがそれだ。

ところが、これらの疑問、というか欠点だと思っていたものが、戦闘シーンになると次々と意味を持ち出してくる。すなわち「スコープサイズの引きの画」「音楽の不使用」「狂気性を帯び出した顔面のクロースアップ」が、いつ何が起こるか分からないという半端ではない緊張感を生み出しているのだ。

加えて突発するアクション、砂埃や煙の利用による画面の充実化、地雷や銃撃の音処理、実に映画にふさわしい岩山のロケーションなどが、戦争映画としてのこの作品の精度を高めている。戦線シーンと銃後シーンがまったく前触れを欠いたカット繋ぎで切り替わることにも非常に驚かされる。

また、終盤サミュエル・ボワダンが復員してからのシーンでも「いつ何が起こるか分からない緊張感」は持続しており、予断を許さない状況を作り出している。ラストカットは一応物語/キャラクタに一定の心理的解決を与えているが、それはむしろ私たち観客には居心地の悪さを覚えさせるのではないか。観客を宙吊りにしてしまうこの意地の悪さもよい。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。