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[コメント] シャレード(1963/米)

夢の中のような殺人事件。それが妙にはまっていたのは、やっぱりキャラクターのお陰でしょう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 ヘップバーンの代表作は何か?と聞かれると、『ローマの休日』(1953)と答える人が多いだろうが(私もそうだけど)、アメリカでは本作を上げる人が結構多いらしい。それだけアメリカ人好みの作品だということになるだろうか。まあ、本作を観ればそれも頷けるかな?コメディ、サスペンス、エロスが程良く揃って、最後にどんでん返しもあって、ハッピーエンドだから。考えてみれば、これほどアメリカ人好みの作品も無い。ドーネン監督、その辺をよく分かっていたから、今回実験的手法は撮らず、まるでヒッチコック張りの作品にしたのかもしれない。

 ところで、本作をようやく観ることが出来たのだが、何かしら妙な違和感を覚えた。何というか、さばさばしすぎというか、スケールの小ささというか…

 いや。違う。本作を特徴づけるのは、緊張感のなさだ。人が次々死んでいき、ヘップバーンも悲鳴を上げるシーンが多く、息詰まるアクション部分も多いのに、なんだか展開がほんわかしてるというか、自分が狙われている割に全員落ち着いている。そのリアリティのなさは本作にあっては逆にプラスに働いているのが面白いところ。くるくると衣装を変えるヘップバーンもそんな演出に一役買っていた。

 夢見る女性を演じる事が多かったヘップバーンだからこそ、そんなリアリティのない殺人事件がよく似合っていたのだろう。いわば本作は古き良き舞台劇からそのまま物語を抜き出したような作品になっている。ここで歌と踊りが入ったとしても、全く不思議でないくらい。リアリティがないと言うのは決してけなし言葉ではない。軽快なテンポと純粋な謎解き、ヘップバーンのファニーフェイスなどなど、映画だからこそ出来る演出の数々に溢れているし、人間関係もかなりしゃれてる。本音を出しているようで嘘。嘘ばかりと思ったら本当のことも。テンポの良さのお陰でその辺があまり嫌味に感じられないのも良い。

 それとサポートするケイリー=グラントの存在も又よし。この人のお陰でヒッチコック風の演出がよく映えるし(笑)、何より「敵か味方か?」と思わせた時断崖(1941)を思い出し、こいつは狙ったか?と思うことが出来る…狙いすぎだよドーネン監督。更に脇を固めるのがウォルター=マッソー、ジェームズ=コバーン、ジョージ=ケネディという、一癖あるキャラクターをわざわざ配しているのも良いところ。

 ヘップバーンはアメリカ人好みの女優なのだが、主演作の大部分は外国で撮られているのが特徴で、この人の場合それがうまくはまってる。

 それと、やっぱりスコアが良い。マンシーニのスコアはここでも冴え渡り、見事なはまり具合だった。

 全般的に演出が面白く、色々なものを詰め込んでいるのでお得感のある作品だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] 茅ヶ崎まゆ子[*]

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