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[コメント] マジシャンズ(2005/韓国)

同じワンカット撮影のヒッチコック作品『ロープ』との、決定的な差。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 技術的なことはよくわかりませんが、ヒッチコックに比べて、単純に、おはなしが全然おもしろくないのでした……。

 せっかく回想までワンカットで織り込むという、それこそ実験的なことをやっているのに、その回想の中で、今や幽霊となったジェウンの魅力とかメンバーとの関係性とかが全然語られない。単なるヤク中のイタイ娘が躁鬱病で飛び降りたという説明的エピソードだけなので、誰にも共感のしようがないのです。これだけ大掛かりな仕掛けをしといて、ストーリーにはヒネリも仕掛けもないというのでは、かなり寂しい感じ。

 三谷幸喜の舞台に『You Are The Top〜今宵の君〜』という作品があって、この映画と実に似た構造のお芝居(死んだ女が同一の舞台上で時間軸を行き来しながら「現在人」の回想とからむ)なのですが、舞台でやると「おお、切り替えうまー」と思えることも映画だと単に「リズムわるー」というだけになってしまってるように感じました。

 時間軸の切り替えの時に役者の衣装換えを見せちゃうという手法も、これはイッセー尾形が舞台でよくやってましたが、映画でそれをやる必然性は結局のところ見出せず終い。「ワンカットだからそれをやる」のは解るけど、「ワンカットでしか表現できない物語」ではなかったように思います。やっぱしワンカット映画の緊迫感は「もうそのまんま、その時間がすべて」だからこそ生まれるものなのではないかと、そんな身も蓋もない感想を持ってしまうのです。

 とはいえ、無限とも思えるTSUTAYAのラインナップの中から私がこの作品を手に取った理由はまぎれもなく「ワンカット95分」のキャッチに釣られてなわけで、なんと言うか、ちょっとざんない気分ではありますが、やはり「ワンカット95分」という試みそれ自体は「見る価値ねえ」とバッサリ切って捨てるには惜しい作品でもあると思います。

(評価:★3)

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