[コメント] 図鑑に載ってない虫(2007/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
死にモドキを巡って登場する謎の組織や、そのボスであるらしい侏儒、乞食村から現れる巨人、夢か現か分からぬ入れ子状の世界など、余りにもリンチ的、『ツイン・ピークス』的。
恐怖表現は、ちょっとした匙加減でギャグに転じる、とは、『まことちゃん』について話しながら楳図かずお氏が言っていた事。ギャグは、可哀相だとお客に思われないよう寸止めにしなきゃいけない、とは北野武氏の弁。ギャグと、恐怖や暴力性とは表裏一体。これまでは、日常性の顕微鏡的拡大による異化効果に巧みな印象のあった三木監督、今回は、よりアクの強い不条理性へとシフトした事により、ギャグよりも、異界的な不気味さの演出の方にこそ秀でた手腕を発揮している。
ギャグに関しては、ベトナムの戦火に消える命の扱いに嫌悪感。嘘のようなタイミングであっさりと爆死するという、後味の悪い冗談のようなその死。だがそうした、ドラマチックさなど皆無の、いとも容易く奪われる人命というのも、一つの現実とも思える。生きている事と死んでいる事とを、映画という虚構の上で同列化してしまい、生も死も特別な位置を占める事が出来ない、そのメタフィジカルな批評性?
だが、そんな高尚なものでもないだろう、と僕の脳の片側が反論してくる。あれは、クシャミをして鼻水ダラリとか、水野美紀にスカトロジックなギャグをさせたり、「‘なんちゃって’やり過ぎちゃった!」と脳天から血を噴射する松尾スズキ等々と同様の露悪趣味に過ぎないんだ、と。
死というテーマを監督自身、やや持て余し気味なのか、それとも、最初から深く考えずに何となく扱ってみただけなのか、その辺がよく分からない、つかみ所のない作品。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。