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[コメント] ウォーキング・トール 怒りの街(1973/米)

道を行くステーションワゴン。キャンピングトレーラーを牽引する。乗っているのは、ジョー・ドン・ベイカーエリザベス・ハートマンの夫婦と子どもたち(男の子と女の子)。
ゑぎ

 ベイカーはプロレスラーを引退して帰郷し、父母の家の近くに定住するつもり。トレーラーハウスはプロレスラーとしての巡業生活の象徴だ。プロレス業界は八百長を前提としたダーティな世界、というような科白があるのだが、しかし、故郷の町も、昔と違って(というか昔は知らなかっただけかも知れないが)随分と汚れた社会であることを思い知ることになる。

 ベイカーが対決する悪役は、まずは、町外れに最近できた「ラッキー・スポット」という名前の遊興施設(賭博及び売春組織)であり、ボスのキャリー−ローズマリー・マーフィとその仲間として出てくる男たちだ。このローズマリー・マーフィの女傑としての描き方も強さはイマイチだが面白い。また、町の保安官や判事なんかも賄賂を受け取っていて、ラッキー・スポットは必要悪だと云い、悪事を見逃している。

 本作は「暴力には暴力」という基本姿勢が一貫している映画だが、ただし銃に関するスタンスは少々複雑なものがあり、興味深く見た。序盤で、ベイカーの妻−ハートマンの、銃嫌いの志向がはっきりと描かれており、中盤までベイカーは、銃を携行せずに、代わりに丸太を削った棍棒で悪役たちをやっつけていくのだ。私は『拳銃無宿』(ウェイン主演の映画の方)を想い起こした。しかし、銃撃されて重症を負ったベイカーに、ハートマンが銃を渡すのを印象的に見せる場面を経て、以降は銃で応戦していく。それが、ラストでは、また銃以外の別の方法を取るというのが良いと思う。とにかく、元レスラーという設定を活かした乱闘場面のファイトシーン含めて、アクション演出はしっかりしている作品だ。

 もっとも、アクション演出以外の、話の運びやキャラ造型に関しては、かなりいい加減に感じられる点が多い。実話に基づく脚色ということだが、例えばベイカーの裁判シーンから、彼が保安官になるまでのプロット構成はかなり性急だし、保安官選挙の最中の現職−ジーン・エヴァンスの描き方はとてもワザとらしい。ラッキー・スポットの中で一人だけベイカーに味方をしてくれる娼婦−ブレンダ・ベネットも、登場すると目が釘付けになるような良い雰囲気を醸し出しているだけに、扱いの中途半端さが惜しいと思う。あるいは、死亡フラグ見え見えの演出場面もどうかと思いながら見たが、いやこゝまで、あからさまにそのムードを見せつけるのは逆に演出−フィル・カールソンの芸の域だとも感じた。

#備忘でその他の配役などについて記述します。

・ベイカーの息子はブレイク前のレイフ・ギャレット。父はノア・ビアリーJr.。母はルーリン・タトル。ビアリーはもう少し筋に絡むかと思ったが。

・ベイカーの友人の副保安官グラディはブルース・グローヴァー。黒人の友人オブラはフェルトン・ペリー

・ラッキー・スポットの男たちにはアーチ・ジョンソンケネス・トビーがいる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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