[コメント] 長江哀歌(2006/中国)
希望と絶望が交互にダムを行き来する観光映画の最高峰。
2人の男女のすれ違いを通して現代の中国の社会情勢を皮肉っている点がアナーキーな事この上なし。北京オリンピックも近い今日この頃、中国人である監督がここまで自虐的に自国の文化を「三峡ダム」に置き換えパロディ化させた手腕は見事としか言いようがない。
山下敦弘が90年代に蔓延していた「狂気」をそのまま「松ヶ根」という架空の田舎に凝縮させ、時代の嫌悪感そのものを「ネズミ」「私生児」「金塊」そして「人間の生首」といったシンボルで具現化し神話物語にまで発展させた『松ヶ根乱射事件』と同様に、ジャ・ジャンクーも現代の俗悪な文化に蹂躙される三峡ダムの労働者達の精神性の高貴さを「UFO」や「ロケット噴射で飛んでいくビル」などの風刺を交えながら対比させているのだ。
こういう監督の批評精神(アナーキズム)にこそ僕は共鳴する。映画の出来不出来とは別に。
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