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[コメント] 金色夜叉(1937/日)

本作も、いや本作でさえ、清水宏らしい道の映画なのだ。まずは何と云っても有名な熱海の別れのシーン、「来年の今月今夜....」という名科白のある、通常は海岸や浜辺で演じられるシーンが山の街道(つまり『按摩と女』で出てきたような道)を舞台に演出されているのだから驚かされる。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 そして、夏川大二郎高峰三枝子が道を歩くシーンで二人の後姿を3カットのカットズームイン(カットを変えながら寄っていく繋ぎ)で見せる感覚もちょっと凄いものだ。

 間貫一を演じる夏川大二郎はアイス(「氷」つまり「高利」貸し)になってからが終始渋い表情で断然いい。また、貫一に惚れ込んでいる、すれた女高利貸しを三宅邦子が演じており、彼女がなかなか度量の大きい演技を示す。中盤以降、お宮役の川崎弘子よりも出番が多く、もう一人のヒロインと云っていい扱い。

 そしてヒロインの宮・川崎弘子もいい。貫一を袖にして成金の富山−近衛敏明を選んだことについて一点の曇りも無く納得しており、窮地に際しても前向きに対処する聡明な女性として描かれている。実は本作を見た後、尾崎紅葉の原作を中盤まで斜め読みしたのだが、原作の宮は貫一を捨てたことを幾分か後悔し、そういう意味で潔さを欠く描かれ方をしている。本作の原作からの改変は現代的な感覚でも聡明だが、ヒロインをヒロイックに造型するという意味で極めて映画的だ。

(評価:★4)

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