コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] アース(2007/独=英)

生きている、ただそれだけで熱くなる。2008.1.28
鵜 白 舞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







鶴がエベレストを越える。富士山と鶴でめでたい絵が浮かぶが、富士山の比ではない。エベレストだ。シュールじゃないか。

でも現実だった。

その足は小枝のようだった。細く頼りない。広げた翼は雪で覆われた世界の中にあっても鮮やかに白く優美だが、白い巨大な山脈の中にあって存在はあまりにも小さい。強風に煽られるがままに上空に舞い上げられ、凧のように彷徨う。

映像を見ながらびっくりして思わず笑ってしまった。なぜあんなか細い身体でエベレストを越えようと思うのだろう。無謀だ。しかし次の瞬間彼らは越えた。高まる音楽。私の鼓動も高まる。涙が出そうになった。

そんなことをする鶴がいるなど知らなかったのでとても興奮したシーンだったが、知っていても楽しめたと思う。この映画、人をひきつける撮影がとても上手いのだ。

冒頭の鳥が空一面に飛ぶシーンが象徴的だ。最初に一部を映しておいて「あらたくさんいるわね」と思わせておきながら、さらにカメラを引いていき「イエイエもっといるんです」とバーンと画面を埋め尽くす小さな鳥の大群を見せる。勿体をつけるのだ。そして派手な音楽を流す。「ホワイトプラネット」の時は盛り上がる歌に気をとられてイライラしたが、オーケストラは逆に心地よいBGMになる。

映像が綺麗というのもある。ホホジロザメがアザラシを丸呑みするシーンは、香港映画のごとく2度もスローで流していたが、流したくなる気持ちもわかる鮮やかな映像だった。よく知らないがいいカメラを使ったのだろう。その辺の魚ではなくアザラシでしかも丸呑みという構図を撮れたことも凄い。

人間相手のドラマであれば、脚本を練って構図を考え、ある程度思うように動かすことが出来るだろう。しかし動物はそうはいくまい。頭で撮りたい絵があっても、上手くいくことの方が難しいだろう。そして過酷な自然環境の中で撮影するからには、撮影する環境も過酷だろう。鶴が風に煽られて大変なことになっていたが、その時カメラマンを乗せたヘリも揺れていたはずだ。ホホジロザメが跳ねるまで、海の真ん中で何時間もカメラを構えて待っていたはずだ。それを思うとまた私の胸は高まる。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)chokobo[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。