[コメント] L change the WorLd(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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原作の『DEATH NOTE』でのLは、正義の遂行の為に自らの命を差し出すようなキャラクターではなく、飽く迄も自身の安全は確保する、異常に警戒心の強い性格に描かれている。だから自らデスノートに名を記す行為からして、映画版独自の、別物のLという印象だ(このトリック自体の鮮烈さは見事だったが)。特に今回は死期が定まっているせいで、Lの行動にも緻密さが欠けている。残された日数でいかに事態を解決するか、という目的の為に知性を駆使する描写も無いので物足りない。
松山Lは原作のLとはまた別のキャラクターとして確立されているので、「原作と違う!」と文句を言うつもりは特に無いが、パソコンのキーを叩く手つきや、椅子にピョンと乗る仕種は、いかにもキャラを作っている感じがして、滑稽だ。台詞を妙に区切って言う台詞回しも鼻につくが、冒頭辺りだけで済んでいたのでまだ良かった。
瀬戸朝香の気どった演技や、Lが自分の名をデスノートに書いたのを知った時のワタリ(藤村俊二)の反応の薄さ、工藤夕貴の妙に肩肘張った悪人ぶり、佐藤めぐみの、冷徹さを表現しようと演技に気合が入り過ぎているせいで、却って戯画的になってしまっている人物造形など、気になる場面が多々ある中、子役の福田麻由子の自然な演技に心が安らぐ。南原清隆の、歯に何か挟まってるのかと思う台詞回しも気にはなるが、そのコミカルさや、全くFBI捜査官に見えないギャップなどで、妙に浮いた印象がある点は、最初からそうした役柄で呼ばれているのだろうから仕方が無い。むしろ場違いなキャスティングをされたのが気の毒な気もする。
脚本は、『DEATH NOTE』のアイデンティティである筈の緻密な心理戦がゴソッと抜けているのが致命的で、Lの推論も根拠薄弱な面が目立つ。実は原作も、理屈の面では細かい疑問点が幾つかあるのだけど、描写の緻密さのレベルが映画とは決定的に違う。
だが、ずっと閉じこもっていた部屋からLを外に出した後も、BOY(福田響志)は英語しか話せないが数学の天才、真希(福田麻由子)はウィルスの感染者として日本中の人間から警戒される存在、という形で、世間から隔絶された状況を保っていたのは賢い設定。Lが真希の首筋に手を当てたのは、慰める為ではなく体温を測る為、だがBOYの頭を撫でたのは彼を安心させる為、といったように、ウェットになりすきないようバランスをとりながらLの人間性を描いているのも、原作ファンとしては有り難い。
環境破壊を食い止める為に、増えすぎた人類を抹殺する、というテロリストたちの主張は、前二作で月(ライト)=キラが社会の浄化を目的に犯罪者たちを抹殺していった発想をさらに過激化させてみたのだろう。的場(高嶋政伸)の、ケロイドに侵された片目が緑色なのも多分、環境保護をそのグロテスクな金銭欲の隠れ蓑にしている彼のキャラクターを象徴的に表わしていたのだろうから、その傷の背景などは特に気にならない。真の過激思想の持ち主である久條(工藤夕貴)の思想的な背景も描かれてはいないが、ワタリに見出されたその知性と潔癖さが極端に突き進んだ、正義感のダークな側面を反映したキャラクターだと見れば、変に理由づけされるよりは描写を省いてくれた方が簡潔だ。
スペクタクルを見せるべき場面での、反射神経の鈍そうなカット割りや、ショットの平板さ、思い切りの悪さ(暴走した航空機が空港の窓ガラスを割る場面はもっと派手に見せるべきだろう)、といった所には不満を感じる。危機感を巧く煽り立ててくれるのは、特殊効果による感染症の描きようと、福田麻由子の芯の強い演技だけ。だが終盤になると、感染の順番に関わりなく、作劇上の都合に合わせた順番で感染者が倒れていく事や、主要キャラクターを演じる女優への特殊メイクが遠慮がちな所など、上手に嘘をつく事が出来ていないこの映画にはどうも感情移入し辛い。軽薄な娯楽作品にも、見世物に徹する一貫したポリシーというものが無ければ面白くも何ともない。
さて、最後の、BOYがニアだという、原作の裏エピソード的な場面だけど、原作でのニアが玩具に執着している事の理由が明らかになる辺りは、上手く整合性がとれているし、感動的でもある。だが原作でのニアの、Lの敗北を知らされた時の第一声を思い起こすと、この映画が描いたような温かみのあるエピソードに違和感を覚える面もある。また、ニアはもっと、性格的にも容姿の面でも、氷のように冷たい印象のあるキャラクター。福田響志の純和風で素朴な容貌は全くの不釣り合いであり、原作愛読者としては、一長一短、といった観のあるエンディング。
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