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[コメント] 人のセックスを笑うな(2007/日)

映画的に「狙った」と思えるようなシーンには正直魅力を感じない。で、永作博美絡みのシーンよりも、蒼井優絡みのシーンに魅力的なものが多い。恋愛はやはり、若者のものですよ(と、この人達のちょうど真ん中の年代の自分は思った)。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







挑発的なタイトルの割りに、内容は結構普通の恋愛ドラマだったりする。まあ、それはさておき、この内容で2時間10数分もあるのは如何なものなのか、という気はしてしまう。大した大河ドラマというわけでもないのに2時間を中途半端に越える映画というのは、どこか物語の経済を逸脱しただらしなさがあるのではないか、という気がしてしまうのだ。

実際、どこにそんなに時間を費やしているのだろうか。たとえばそれは、オープニングのタイトルが入るまでの一連のシークェンス、その前半部。靴を蹴りあげながらふらふらと歩く永作博美、縦へ横へ通り過ぎる数台の車、横切る犬、ボゥとした幽霊のような表情の永作博美の暗いトンネルへの突入、etc。如何にも「映画」的な時空を捉えることを狙った、しかし狙った意図が透けて見えてしまうような画の連続だ。これって、こう言ってはなんだが、物語にとっては余計ではないか?

物語に寄与しない余剰があってはならない、とは思わないが、それを狙っているのが透けて見えるようでは、失敗なのではないかと思うのだ。ある意味では、青臭いのだとも言えるかも知れないが、青臭い映画遊びに観客がつきあわねばならない義理はない。

んで、そんな調子で綴られるこの映画。ドラマとしては、前半は永作博美絡みの展開、後半は蒼井優絡みの展開が多くなる。言わば40絡みの恋愛と、20絡みの恋愛の対比なのだが、ドラマとして面白いのはやはり20絡みの恋愛であったりすると思うのだ。物語が永作博美視点では提示されていないというのもあるが、蒼井優演じる女子のシーンの方が、少なくとも自分には魅力的に思われるシーンが多かった。これは恐らく、演出の井口奈己の素直な投影が、まだ20絡みの蒼井優の年代の方にあるということなんだろう。

そういう素直な視点で撮ってもらっていった方が、映画は実際のところ面白くなると思うのだが。自分が見出したいと欲望するものを撮るということ。つまりは自分が本当に見出したいと欲望するものはいったいなんなのか、ということ。この映画のスタイル、その時間と空間の切り取り方には、正直素直な欲望を感じない。それが素直な欲望で撮られていたのなら、狙いが透けて見えるような感覚は抱かれないはずなのだ。

(評価:★3)

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