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[コメント] バンテージ・ポイント(2008/米)

デニス・クエイドハリソン・フォードを意識していたようだ。とても良かったと思う。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画版『24』などと揶揄されているが、これは全く別次元の映画として評価してあげたい。テロという題材も、大統領が思いきり映画の主人公になってしまう設定も、挙げればきりがないほど『24』そのまんま、という気がするが、それでもこの映画は独立した映画として目が離せない内容だった。

巻き戻し感覚はヒッチコックでも黒澤明でもすでに挑戦済みではあるが、この映画が現代を写しているのは、テロという一点だ。

最後の寝返ったエージェントが

「この戦いは永遠に続く」

というセリフはとても商業的な匂いがするし、動機が弟を救うために利用される元兵士の兄だったり、テロを起こした理由が大統領を誘拐する身代金目的(?)のように思わせたり、極めて安易さだけが見終えた後に残る。

要するに、この類の映画はきっかけさえあれば誰にでも撮れる映画なのだ。

それでもデニス・クエイドの活躍を見ると、全盛期のハリソン・フォードを思わせ好感が持てた。

さらに、導入部でシガニー・ウィーバーを使うことによって、予備知識のない者になぞめいた雰囲気をもたらす。

マスコミ、地元警察、エージェント、観客、テロリストA、テロリストB、そして大統領という立場から何度も同じ状況を同時進行で複数カメラを動かすことで、演技の緊張感が十分伝わった。

大統領が自らテロをやっつけようとする姿勢は、いかにも『エアフォース・ワン』や『インディペンデンス・デイ』など、合衆国を鼓舞することにつながっている。

そういえば、昨年末にブッシュ大統領がイラクの新聞記者に靴を投げつけられた時

「避けるのがうまいなぁ」

と思ったものだ。しかも靴は2回投げられた。2回もの攻撃を避けるのは、合衆国大統領としての適正に必要不可欠なものなのだろう。この映画にもそうした姿勢があらわれている。

いずれにしても、カーチェイスなども含め、1時間半を一気に見せてしまう迫力は素晴らしかった。

最後に車にひかれそうになった少女が救われるシーンだが、このシーンに映画全体の救いがあるかどうかは疑問だ。

例えば『クラッシュ』という映画を思い起こせば、この登場人物のそれぞれに隠された過去や人種意識、宗教問題などは、とても安易に語れるものではない、そこまで切り込むことができれば、もっと品のある映画になったはずだ。

(2009/01/04)

(評価:★3)

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