[コメント] ダージリン急行(2007/米)
オーエン・ウィルソンがいい。脚本や演出、撮影といったプロダクションの質も高い。だがこの映画がその出発点から到達点に至るまで、コメディであることを(無意識的にか)志向しているが故に、それが枷として見えてしまう。突き放した写実的なおかしみに達していないといおうか。
上手いことは上手いが、よくよく考えると、コミカルな事象が先にあり、それをいかに見せていくかという語り口の映画であるようにやはり思えてしまう。だからそのユーモアセンスが、好きか嫌いかという嗜好のレベルで語られ消化されてしまうのが惜しい。ジャンル映画であるか否かの境界上に位置しているようなもどかしさがある。
映画におけるユーモアとは何だろう、と考えさせる映画だ。私は、面白いことを見せてもらうのではなく、見えてしまったものが受け手の内部で面白さに変容するその瞬間がたまらなく好きだ。見世物とは否なるおかし味、あるいは板にかかった時にネタを凌駕するような、驚きを伴う笑い。
例えばジャームッシュ『ブロークン・フラワーズ』のような映画と比べてしまうと、本作のユーモアセンスにはやはりどこか設えた感じを持ってしまう。テクニカルな面で優れているだけに余計そう思うのかもしれない。また、これはテーマとも関わるのだが、そうした作り込みに子どもじみた部分があるのも個人的にはあまり好みではない。
とはいえ、傑出した才能の持ち主であることも確かだから、登り調子のキャリアを大いに期待できる監督だ。アート系から大化けしたポール・トーマス・アンダーソンの例もあることだし。
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