[コメント] たぶん悪魔が(1977/仏)
大傑作。これは凄い。全カットが緩みない構図。総てのカットが刺激に満ちている。それは掛け値なしで、総てのカットにおいて、なのだ。構図とカット割りを見ているだけで、面白くて仕方がない!
人物は、ほとんどウエストショット。頭部を画面上部ぎりぎりに来るような配置でとらえられている。歩行する人物なんかは勿論だが、テーブルが下半分に映っていて、上半分が座った人、というようなとらえ方だ。この構図が魔法のような面白さを生み出しているのだろうか、いやそれだけではないのだろう。人物の視線や表情も奏功しているのだろう。しかし、ホークスもこのレベルのウエストショットが多くないか。あるいは、要所で、歩く足(下半身)だけのカットを挿入したりして、アクセントをつけるのも抜群に上手いのだ。
例えば、ミシェルがアルベルトのアパートで、徐々に不機嫌になっていき、唐突にチョコレートの箱を窓から道路へ放り投げるシーンのカット割りなんて完璧じゃないか。面白すぎる。環境保護に関する問題提起的な部分(水俣病患者の映像も映る)や、主人公シャルルの厭世主義の表出など、決して明るい映画ではないのだが、しかし、ずっとニヤケっぱなしで見てしまった。教会での集会のシーンで、同時にパイプオルガンの調律が行われており、真面目な会話の合い間に、オルガンのメロディが聞こえる部分なんて絶妙な可笑しさだ。
そしてこのラストの衝撃。決定的瞬間を画面外で処理する、というような厳しさへの驚きもあるのだが、何よりも、男が暗闇に走って行き、見えなくなるのを固定ショットでおさめたカットにショックを受けた。いや、もうこれしかない、というブレッソンらしい構図。『抵抗』のラストカットの、カメラ(映画の世界)からの解放と同じではないか。
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