[コメント] 三十九夜(1935/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ジョン=バカンの冒険小説を元にしたイギリス時代のヒッチコック監督得意のスペンス作品で、後年『北北西に進路を取れ』(1959)に見られるような、いわゆる“巻き込まれ型”の作品。イギリス時代のヒッチコック最大のヒット作とでもある。
この作品の醍醐味は、主人公が何がなにやら分からないまま事件に巻き込まれ、一人で必死になって逃げながら、事件が徐々に解明していくと言う過程にあるが、ヒッチコックの作品は謎の解明よりも、場面場面の危機の連続をどう主人公がすり抜けていくか、の方に主眼が置かれているようで、ここでも主人公は何度となく絶体絶命の危機を迎え、その度毎に主人公の機転や幸運などですり抜けていく。その課程で力強い仲間と出会ったり、女性と軽妙な恋物語などを入れるなどして最後まで飽きさせない作りで楽しませてくれる。たしかにここにはリアリティを二の次にしているという評はあるだろうが、そういう荒唐無稽さこそが映画のリアリティであり、醍醐味であることは事実。
サスペンスに始まり、コメディ調に変わって、最後はラブストーリーへとスピーディに変化していく過程が見事だが、その合間にいくつものショウが入っているのが一つの特徴となっていて、その一つ一つのショウがストーリーに区切りを付けている。最初はミスタ・メモリーの記憶術に、そして途中に出てくるハネーの朗読も一種のショウだった。そして最後は又最初に帰り、ミスタ・メモリーの記憶術へと戻っていく。そのショウも視覚で楽しませるものではなく、男の言葉によるものという特徴付けがなされている。その辺のこだわりが流石ヒッチコックと言った感じだ。
台詞もウィットが効いているので、コミカルなロード・ムービーとして観ても充分に面白い作品として観られる。
そうそう、咄嗟に女性にキスをして危機を逃れる話はこの映画が最初。後々の映画で数多くパクられている。
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