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[コメント] 隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS(2008/日)

服を着てると言うよりは服に着られてると言った方が良いかも?「服」を「オリジナル」に変えても可。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 こりゃやりたい放題だな。オリジナル版の設定を受け継いでるのは確かだけど、基本路線を踏襲した以外は完全新規の作品。

 だからといってこれは悪くはない。どういう風に作ってもオリジナルは越えられないってのが分かった上で作ってるんだから、折角だから思い切り遊んでやろう。という気持ちが画面のここそこから溢れてるし、色々インスパイアを受けてますよ。と言うことを敢えて隠そうとせずにやってるのも、逆にニヤニヤしてしまう。

 オリジナル版は六郎太(三船敏郎)を中心として、雪姫(上原美佐)を守りつつ、太平(千秋実)と又七(藤原釜足)を引き連れての行軍。この中で特に太平と又七は良い凸凹コンビとなっていて、それが『スター・ウォーズ』におけるR2-D2とC3-POになった訳だが、本作は敢えてそれを踏まえて作られているように思える。ただし、キャスティングを変え、武蔵と新八は、ルークとハン・ソロ役に、六郎太をオビ・ワン役にして。オリジナル版をインスパイアして作られた『スター・ウォーズ』をパクって作ったとしか思えない内容。しかもそれを全く隠そうともしてない。ここまであっけらかんとやってしまえば、いっそ立派だし、思い切り遊んでるのもよく分かる。

 『スター・ウォーズ』を思わせる演出はかなり徹底していて、画面画面では殊更ワイプを多用して、いかにも。と思わせるし、重低音の音楽と共に現れる椎名桔平演じる鷹山は、黒光りする甲冑を身に纏い、気に入らなければ味方でさえ斬り殺す。しかも彼のモチベーションは自分の顔に傷を付けた六郎太に対する復讐とまで、見事なダース・ベイダーぶりを見せる。とどめは勿論デス・スターならぬ隠し砦で爆発のタイムリミットの中での活劇。一旦裏切ったと見えた新八までもが、親友の危機には奇声をあげて助けに来るし、最後は砦の爆発をバックに騎馬で爆風の中から六郎太が現れるシーンまで再現、という徹底ぶり。オリジナル作品を真似するよりも『スター・ウォーズ』の方に近づいてるのは、むしろ立派だと言おう。

 ここまでのパクリぶりを見せてはいるが、それをしっかり見せる努力も怠ってない。いくらCG多用と言っても、邦画でここまで派手な作品を作れる演出力は流石樋口監督。これだけの演出力はこの人しかいないだろう。正直この作品だったらアクション作品として文句なしに海外に輸出も出来る。結局演出力によって本作の無茶ぶりは一本の映画に仕上がっているのだ。

 後、本作における生のシーンはかなり上手く作られてるのも特徴だろうか。勿論CGも多用はされてるが、人間が生で戦うシーンや、馬に乗るシーンなど、難しいシーンもかなり作り込まれ、古い特撮ファンには結構驚き。逆に言えば、現在の特撮ヒーローものは、これだけのことをこなしていると言うことでもあるんだが。TV特撮もある意味では進歩してるんだよ。いろんなところでマニアックな楽しみ方を散りばめてるのも樋口監督らしさだ。

 …だけど、一方肝心な物語とすれば…これが『スター・ウォーズ』であることが分かってしまうと、途中からラストの展開は自ずと分かってしまうため、単に形式的な作業をこなしているだけになってしまい、ぶっちゃけた話、時間にして3/4は退屈極まりないだけの話だったりする。話が分かっちゃ、いくら派手にされても映画ではきつい。

 設定について…は言うだけ野暮だろう。どうやらこの世界は一般的な封建制とはかけ離れたおとぎ話の世界なんだろうから。これは時代劇ではなくファンタジーと割り切る必要がある。オリジナル版ではあれだけ下からの視点が定まっていたのに、この作品ではポーズでしかない。封建制というものをを目上の人間が勝手に搾取して暴力を振るう世界と勘違いしてるのも致し方あるまい。これはファンタジーなんだから(ここはちょっと腹立ってるけど)。

 後、残念なのが長沢まさみがなあ…この人、こんなに和服が似合わないとは思わなんだ。馬子にも衣装とさえ言えないぎこちない着こなし方と言い、七五三の写真見てるみたい。

(評価:★3)

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