[コメント] ランボー 最後の戦場(2008/米=独)
「表面的な個性を飾っただけの思わせぶりな台詞」と、「言いたい事は山ほどあるが、言ってしまうと感情が爆発してしまうので抑えに抑えて放った一言」はまるで違います。当然後者を考えるほうが困難である事は自明の理と言えます。抑えに抑えて放った台詞は、誤魔化しが効きません。華美な美辞麗句の入る余地は無いからです。『ロッキー1』ではそれが出来ていましたが、あれは作り手の当時の心境を投影して作り上げた、私小説的な面が強かったので、瞬く間にその能力は枯れてしまいました。『ランボー1』のラストの台詞は良かったですが、あの成功の要因は泥臭い演技によるものが大きかったのではないかと思います。しかし今作は違います。この作品におけるランボーの台詞を、私小説的感性で書く事は出来ないでしょう。また、演技も控えめなものになっています。純粋に台詞をひねるレベルが上がったように感じられます。
そして最近流行りの、ザラついたグレーがかった色合い+コマ落とし(何という名称の技法かわかりません)を施した画面が作風に非常にマッチしていると思います。単に流行りに乗ったという風には見えません。
名作戦争映画とは大抵悲劇でありますが、今作は悲劇として纏めていないあたりがとても新鮮でした。暴力シーンを観て、思想的なものが存在するであろう作品はちょくちょく存在します。しかし今作のように「画面から目を離してはいけないような気になる」暴力シーンを見たのは生まれて初めてです。暴力に起因する悲劇によって感傷的になれる作品は沢山あります。暴力シーンによって目を背けたくなる作品はそれ以上に多いでしょう。しかし目の離せない暴力シーンというのは、今のところこの作品でしかお目にかかった事がありません。
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