[コメント] 最高の人生の見つけ方(2007/米)
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思えばかの作品を撮ったイザベル・コヘットはまだ新人バリバリであったし、主演のサラ・ポーリーは殺すには可哀想なほど若かった。それゆえ、この作品でいかにモーガン・フリーマンが家族のために粉骨砕身してきたといっても、もはや彼自身人生の酸いも甘いも噛み分けた人生の達人であり、またジャック・ニコルソンが孤独に死んでゆく身だといっても彼には有り余る財産がある…それをもって、ついポーリーの決意のほうを応援したくなっても仕方あるまい、と軍配を彼女に上げたくなる。
ところがここで強調されるのが、ふたりのアカデミー賞俳優の至芸なのだ。フリーマンは苦労人を演じて右に出る者はないし、かたやニコルソンといえば意地悪ジジイながら泣かせる演技といったら彼の独壇場だ。言ってみれば横綱の貫禄充分なのであり、二番煎じなどという口出しをさせない「笑って泣ける」悲喜劇のお手本に自然となってしまうのだ。これではコヘットも裸足で逃げ出すよりないかと思われる。
しかし、これは金持ちの夢物語だ。一般人がチョモランマに登り、タージマハールを眺め、ピラミッドに腰掛けて哲学的になれるかと言えば、死を覚悟した旅だからこそ周りは止めろというだろう。ポーリーの小さなワガママとはスケールがダンチなのだ。自分はこれには応援できない。だからこそ旅は決裂し、夢を残したままフリーマンは死んでしまう。そしてニコルソンの悪戯心が彼の死期を早めたとも言えるのだ。そのあとに感動的な場面があったにしろ、いささかニコルソンにはやり過ぎの観があった。
お伽噺には程度がある、ということの見本のような作品であった。
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