石井克人監督は『鮫肌男と桃尻女』や『茶の味』でも森や山の緑へのこだわりを見せていました（『ＰＡＲＴＹ７』はどうだったか忘れました。他の作品は観てません）。「茶の味」では、山や木々に囲まれた自然をふんだんに取り込むことで、世間や社会という概念そのものを映画（物語）のなかから排除するという効果を狙っているように感じました。今回もまた、東京という世間から隔絶された山中の温泉で、いわば世間や社会の象徴である東京から流れてきた女（マイコ）や子供（広田亮平）や男（堤真一）が引き起こす物語です。

この70年前の小作品のトレースが、石井克人にとってどんな意味を持っているのかがはっきりするのは、きっと次回作品を待つことになるのでしょう。楽しみです。