[コメント] 三万両五十三次(1952/日)
傑作。ずっとニヤケながら見た。本作も徹底したローアングルの映画だ。木村恵吾も、小津みたいにカニ様の三脚を持っていたのか。ローアングルじゃないカットは数えるほどしかなく、走る大河内傳次郎をドリーの横移動で撮ったカットと、川面の俯瞰ぐらいじゃなかろうか。
幕末、京都所司代へ江戸から三万両を届ける話。その役目は誰がいいかの相談シーンから始まる。澤村國太郎、香川良介、菅井一郎ら。香川らは、河津清三郎を推すが、殿様の國太郎は、大河内がいいと云う。香川の妻、マキノ智子は、娘の折原啓子が、河津よりも大河内を好きなのは、見る目があると云う。
お役目についても嫁取りについても後塵を拝した河津は、大河内をつけ狙う。大河内は河津らから逃げて、轟夕起子の女中部屋へ入り込むが、この部屋にあった瓢箪が気に入り轟からタダでもらう。さて、その瓢箪が実は一万両のお値打ちだったと、轟は加東大介から聞くのだ。という訳で、お役目の三万両(十六菩薩)と一万両の瓢箪を持った大河内ら一行の旅を、河津ら敵対グループ、轟、加東、香川の娘の折原が追って来る、という展開になるのだ。
全編大河内のキャラクターが飄々として面白く、演出も軽やかで、実に調子がいい。五十三次というが、その実、本編中では、三島の宿、川止めで宿泊する宿(大井川か)、瀬田の大橋の三場面ぐらいしか描かれないのだが、まずは、最初の三島のシーンが、見事です。ずっと、ノーエ節がかかっているというのが良く、その中で進行する人物の出入りと、飛んだり跳ねたりの殺陣シーンが楽しくて仕方がない。その後、旅が進むに従って、折原だけでなく、轟もだんだんと大河内を好きになる、という部分の演出もいい。エンディングの大らかさも絶品だ。
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