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[コメント] イントゥ・ザ・ワイルド(2007/米)

実話であることのほかは、映画として完全ではない。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







うちのママと観終わった後一致したことがあって、「これってブッダじゃない?」ということ。もちろん、それは映画としてのこと。実話であることの本人にその考えがあったかどうかはわからないんですが・・・。しかし、自らを追い込み、悟りをひらこうとする行為は、正にブッダがチャレンジした修行そのものような気がします。

この映画がすごいのは、実際にその場で撮影したことでしょう。

全く予備知識なく観た映画ですが、観ている間の臨場感はすごかった。

この青年の生き方を私たちはどこまで理解できるというのでしょうか?そんなことばかり考えていました。

大学を優秀な成績で卒業し、親に反発してアラスカを目指す、という展開は映画としてあり得ない形式ですね。そしてそれを実現してしまう恐ろしさ。CG慣れした昨今でこれほど自然と対峙するシーンを積み重ねることなど奇跡としか言いようがありません。

最も感動的だったのは、最後に老人(ハル・ホルブルック)との生活に生み出される現実です。孤独な老人。そして未来に孤独を迎えようとする成年の僅かな日々で「許すこと」について教えられます。「許す」という行為の勇気。これを抱いて青年はアラスカに向かいます。

そして禁断の果実に手を出して自ら死を迎える。

この顛末に私たちは何を思えばよいのでしょう。

単純に自然の恐ろしさとか、雄大さとか、人間の儚さなどを思うのであれば、この映画は失敗となるでしょう。この映画がもたらそうとする孤独。この試練(修行)を同じベクトルで感じ取れるかどうかが、この映画のポイントだったと思います。

原作に忠実すぎて、映画としての取り組みにあまりにも欠ける点が多かったことが残念ですね。ロードムービーとして帰結してしまう流れを断ち切ろうとする勇気がほしかったですね。

これでは、そこにある物語で終わってしまっています。

もう少し映画としての何かがほしかったと思います。

原作の勝利ですね。

2009/8/12

(評価:★4)

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