[コメント] 言えない秘密(2007/香港=台湾)
ジェイ・チョウの映画作家としての第一歩。処女作としてはじゅうぶんな出来だろう。全篇を通じてリー・ピンビンの功績が極めて大きく、物語の底が割れてからはシーンが「説明」に費やされてテンションの低下を招くなどしているが、それを差し引いてもこれは確かな演出を持った立派な「映画」だ。
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映画を見終った人むけのレビューです。
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演技者としてはとりわけリアクション演技に冴えを見せているジェイ・チョウは、演出家としては(やはりと云ってよいのだろうか)「音」に関して新人監督らしからぬ手腕を見せている。さながら「音の活劇」といった趣きのピアノ・バトルはむろんのこと、木造校舎の床の軋みなど細かな音響に気を遣って丁寧に映画世界を構築している。画作りに関してはほとんどがリー・ピンビンの力によるものなのかもしれないが、演奏室に差し込む光などは特筆すべき美しさで、こうした光と影の劇を紡ごうとする姿勢もまた映画にふさわしい。あるいは「自転車」や「橋」といった細部に対する配慮、(じゅうぶんに成功しているとは云えないものの)コメディ・パートやダンスシーンを志向する態度も。
グイ・ルンメイもよい。線の細さがはかなげなヒロインとしての存在によく合っている。ラストの大破壊についても、切なさと馬鹿馬鹿しさの臨界点を示して面白いと思う。
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