[コメント] その男ヴァン・ダム(2008/ベルギー=ルクセンブルク=仏)
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いつも口を「へ」の字に結んでいる感が強いヴァン=ダム氏だが、涙をこらえて歯を食いしばってる感が素晴らしい。バリバリにナルシストの所業だし、その割に自殺行為的で起死回生の糸口になるものとのも思われないが、もはやそこはどうでもいい。
本当に面白いコメディっていうのは、大振りのネタが単発で提示されていくのではなくて、ちょこちょこと面白い小ネタが関係しあいながら連綿と消えることなく累積して続いていく形式だと思う。野球でたとえるとソロホームラン連発の空中戦じゃなくて、ランナーが常に満塁なのに牽制で刺されたり隠し球が決まったり、点が入るときもスクイズみたいな小技、そういう試合な感じ。
これも気絶した男や裸の警視、「ジャン・クロードとの記念写真」、「セガール」というワードを時系列のいじくりや視点の変更で何度も提示するのですが、そのたびごとに違う面白さがにじんで、しかもそれらは被写体としては画面から完全に退場することがないわけで、そうすると何重にもうまみを増したネタが氾濫して、画面上に映る何もかもが面白くなってくる(受信機とか弁護士の変な髪型とか)。そんな中に「口座指定」みたいなホームランネタが入ってくるので、気持ち良くて仕方がない。行動原理の種明かしの要領も凄く面白い(時系列のいじくりってサスペンスばかりに多用されてる気がしますが、コメディと相当相性良さそうですね。あ、これもサスペンスあるのか一応)。
あと、スピルバーグの出来損ないみたいなルックが、独特な抑制感を演出していていい。「笑かすぞ笑かすぞ」みたいな気配が横溢してると引いちゃう。劇伴も品がある。
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