[コメント] 斬〜KILL〜(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
「キリコ」はまるでダメ。他の3本と比べてとかでなく、一つの短編としてまったくひどい。
ストーリーと最後のオチはともかく、出ている役者がまずひどい。今日、素人劇団でももうちょっとマシな演技をするのがいるんじゃないかと思えるほどの三文役者を良くまあ探してきたもんだし、それを主演級にまですえるにいたっては、真面目にやる気ねえんじゃないかと疑ってしまう。
それと肝心の「ブレイド・アクション」が目も当てられない。時たま外国映画で日本のチャンバラを真似たような刀を使ったアクションを見せるのがある。(最近では『ローグアサシン』なんかがそう)このアクションはそれよりひどい。外国映画の出鱈目のチャンバラアクションを見よう見まねでやってみただけじゃないかとさえ思える。
致命的にダメなのは刀の見せ方。遠目で見ても出来の悪い模造刀でしかないのが丸わかりだし、単に薄い鉄板を振りましているだけでは白けてしまう。冒頭と中盤、アジトに乗り込む際に面をつけた手下から刀を奪うアクションを見せていたが、単なるくず鉄回収にしか見えないから興ざめする。「ブレイド・アクション」とかカッコつける前に、最低限、日本のチャンバラ時代劇をまず見ろ、それから顔洗って出直して来い、と言いたい。
「こども侍」は、白黒映画にして、さらに活弁仕立てにしたアイディアが秀逸。この二つがこどもに侍をやらせるという映画の土台に大いに華をそえている。
それに涙が出るほど嬉しいのが、主人公の「机龍太郎」という名前!未完の大長編大河時代劇『大菩薩峠』のニヒルな主人公・机龍之助がまずピーンと来るし、続いて悪の親玉・師直といじめられっこ塩治にいたっては、由緒正しき時代劇「仮名手本忠臣蔵」の高師直(吉良上野介ね)と塩冶判官(浅野内匠頭ね)かと、涙がちょちょぎれる。
もうこれだけで、普通に立っている姿を見て「お主、できるな」「只者ではない」とか言っちゃったりする、完璧な時代劇の世界だ。
しかも走る時にはしっかり抜き身刀をかついで走るなど、刀の扱いが実にさまになっているし、いかにランドセルの横に刀を着けたり、時代が平成であっても、もうこれは立派な本格派時代劇だというに十分。
とどめはラスト。手下や用心棒は容赦なく斬り捨てながら(片腕斬り飛ばされてるのもあったなあ)、悪の親玉・師直だけは命を助けてしまう。この大げさな外連(けれん)がたまらん。
いかにも古きよき大チャンバラ活劇時代劇そのままの終わり方みたいで、そうそう、こういう大団円を迎える時代劇ってあったよなあ、ととことん懐古趣味に浸らせてくれる。
欲を言えば、主人公がいよいよ封印を破る時にもっと派手に葛藤を盛り上げてくれても良かったが、まあなんだかんだ言ってもこどもが主役だからあまり深刻に葛藤されてもやりすぎになるだろうから、あれくらいでいいのかもしれない。そういうことも含めて、間違いなく現代によみがえり、なおかつ、現代に大きく伸びていくだけの可能性を感じさせた堂々の本格時代劇だった。
「妖刀射程」は、旧陸軍兵士(大刀の方)は凄みがあってぎらぎらした感じが良かったが、SAT(脇差の方)は、これまたどこの三文役者かと思わせるようなへたくそな芝居だった。だがその欠点を、銃と刀と融合というアイディアがしっかりカバー。
いくら大刀と小刀とは言え、単発式ボトルアクションとオートマチックでは勝負にならんだろう、という気がしないでもないが、はっきり言って、ボトルアクションを取り入れた大刀の殺陣はむちゃくちゃカッコええ。
びしっと見得を切るごとに手元でチャキーンとボトルアクションをして空薬きょうを排出する、その様は思わぬカッコよさで、今度、傘とかホウキでチャンバラごっこする時は絶対マネして、手元でチャキーンとかゆっちゃお、と思わせるだけの魅力があった。
最後の「ASSAULT GIRL2」は、いかにも御大らしいもったいぶった始まり方で、相手役がなかなか出てこんなあと見ていたら、いきなり古めかしい戦車の登場で意表を突かれ、それから短時間のアクションで羽を生やして飛んでって、ドドーンとタイトルが大写し、サントラが流れてきて、「おお、これまでがオープニングで、いよいよ本編か。もったいつけよんなあ。」と思っていたら、実はそれがエンディングだったというある意味、驚愕のラスト。
なんだか短編映画というよりも長めの予告編みたいな映画だったが、独特の世界を感じさせる雰囲気が良かったし、もしあれが予告編であったなら間違いなく本編を見に行くと思う。
それにかたや大刀、かたや素手に両腕拘束、という変則的な形での戦いというのを描けば、本作のように素手の側が大刀の側に密着し、後ろ後ろを取りながら体捌き、足捌きで大刀側をコントロールしながら、少しずつダメージを与えていく戦い方になるのではないか。
柳生新陰流伝説の奥義・無刀取りは、実際は相手の懐に飛び込んで相手の手元を攻撃して刀を飛ばす技でもあるらしいが、時たま、読み物などで、それをこの短編のような形で、無刀側が背後背後を取りながら、大刀側を少しずつ弱らせる、と描写しているのを見かける。もちろんこの戦い方は無刀側が大刀側を殺すのではなく、弱らせ戦意を失わせるというものであり、案外、「柳生の剣は活人剣」という伝説とも結びついているのかもしれないが。
ただまあ、そういう意外に本格的なアクションシーンを見せてくれただけに、その短さにいささかずっこけながらも、十分満足できる仕上がりだった。
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