[コメント] チェ 39歳 別れの手紙(2008/米=仏=スペイン)
孤立無援、犬死の行軍。見ていてただただ憂鬱になる。「前編を見たから」以外に、見る価値はあるのだろうか?090402
作品自体は決して悪くないが、ただただ死に向かって無駄を重ねるゲバラの姿は、見ていて辛いし面白くも無い。
革命とはなんだろうか。それは、政治権力の奪取であり、社会秩序の転覆である。革命は、民衆の後ろ盾が無ければ成功しない。例え成功したとしても、民衆の支持のない革命は革命にあらず、クーデターに過ぎないのだ。
さて、キューバで成功した革命がボリビアでは失敗した。一番の原因は、カストロが象徴する政治力の軽視だろう。ゲバラやゲリラ達が前編同様、慈悲と理想に満ちていたのに対し、受け入れる側の民衆は、現実に押し流されるしかない教養の無さが強調されていた。
虐げられている民衆は、理想主義がもたらす優しさよりも、現実社会の暴力に簡単になびく。米国のような大国は、その「隙」を利用し搾取する側に加担する。革命を実現するには、理想を受け入れる教育水準が民衆に必要だし、教育をもたらすための政治力が不可欠なのだ。
民衆の支援もないボリビアの行軍は孤立していた。ときには、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』での連合赤軍を想像させる程度に、無意味かつ無駄骨である。
理想を掲げて突き進み、実現する心地良さを得られるのが前編であれば、後編のこの作品は、理想が何一つ受け入れられず、ただただ挫折する姿を眺める不快感ばかりだ。
英雄たるゲバラであっても、受け入れる下地が無ければ単なる狂信者に過ぎないという、むなしい現実を理解するために見るべきなのか……。ボリビア同様に米国の支援を受けている日本社会なら、メディアに扇動された民衆によって、ゲバラは袋叩きだろうなぁ、なんて。
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