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[コメント] チェンジリング(2008/米)

古代中国の「馬鹿」のエピソードを思い出した。
CRIMSON

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 昔の中国で皇帝に鹿を献上して「これは馬です」と言った「馬鹿」の語源の一つとも言われるエピソードだ。本来の意味とは違うが。この映画でいえばあんなことを思いついた誰かは馬鹿だが、それを押し通そうとした所長なども馬鹿。そしてそれを疑わない精神病院のスタッフも馬鹿である。そんな構造自体が馬鹿である。だが馬鹿に馬鹿ということは難しく、相手が偉ければそれは恐ろしいことである。

 ところでこの映画で一番驚いたのはあの少年だ。アカデミー賞をやってもいいんじゃないか、と思った。演じている子役じゃなくあの少年自体に。どのくらい脚色が入っているか分からないが、他人の家に入り込み全く知らない人を「お母さん」と呼んだり、学校へ行って先生にあからさまに偽物と恥を晒され、描写がないがおそらく周りの子供たちにも「お前、誰だよ!この嘘つきが!」と罵倒され仲間外れにされてたに違いない。そんな境遇にも耐え24時間毎日毎日赤の他人を演じ続ける精神が凄い。警察に洗脳されていると思うし、最後の描写を見ると母親ともあまりうまくいってないように見える家庭環境も原因にあると思う。しかしそれを上回るあの演技(しつこいが子役の演技じゃなく)を続けた彼は何を持って頑張ってきたのだろう?彼のその後の人生も知りたかった。

 映画自体はアンジェリーナ・ジョリー の冤罪が晴れるところでクライマックスを迎えている為に、殺人犯の処刑のところは長く感じた。でもそれはこの映画が警察の腐敗とそれと戦った女性の話だけじゃないからだろう。

 あの子供が逃亡の際に見せた勇気と死刑時の殺人鬼のビビりっぷりとの対比、そしてわが子の勇気に救われ、希望を持つ母親の気持ち。親子の情という目に見えない、しかし結びつきの強い気持ちを描きたかったのだろう。途中は牧師や弁護士に助けられながらも、最初から最後はまた一人で頑張り続けた母親を、ピアノの優しい静かな旋律が寄り添っていたのが印象深かった。

 書いてて思ったけど、現在でもこれと似たようなこと(他人の骨を送ってきて本人の骨と言い張った)が起こったような・・・。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ジェリー[*]

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