[コメント] フィッシュストーリー(2009/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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伊坂幸太郎さんの原作は映画になりにくいようですね。
でもこの展開はなかなか読めない。
マジで飛躍が凄いと思いました。
ここでは概ね4つの時代が描かれます。
1、フィッシュストーリー(ほら話)の誤訳時代
2、早すぎたパンクロック時代
3、ヒーロー伝説の時代
4、宇宙飛行士の時代
こうして並べると、ドラマは最初から「ほら話」であることを物語っていますよね。このあたりのフェイクぶりが実に巧妙でうまいなーと思いました。
ある意味群集劇。
『天井桟敷の人々』とか『戦争と平和』とまでは行かないにしても、各カテゴリーに登場する人物が実に個性的で、それぞれの人生を丁寧に表現しています。
だから、それぞれのドラマ自体に魅力がなくても、最後の最後、一気にこれらの事実が折り重なる。だから最後に強烈な感動が押し寄せてくるんでしょうね。素晴らしい映画だったと思います。
原作は読んでいませんが、映画はとても映画らしく表現しています。
ヒーローをとして育てられた青年の少年時代。その父親が誰なのかは、最後までわかりません。
そして地球に隕石が落ちてくるのを救う飛行士が誰なのかも、最後の最後にならないとわかりません。
そしてテレビのゴレンジャー(映画のファーストシーン)にあこがれる少年が誰の子で、その子供がレコード店の店長だったことなど、まるでわかりません。
何しろ、この映画の中心を担うパンクバンド「逆鱗」が、ドラマとドラマを繋ぐ役回りであって、最もドラマとして印象的でありながら、話の中心では全くなかった、という裏切りにも似た展開に思わずにやけるしかないのです。
こうした形式のドラマはあまり経験がないので、とても楽しく拝見しました。
中盤までのだるさを最後に吹っ切る力を持つ映画ですね。
『運命じゃない人』あたりもこの系統の映画に属するのでしょうか。
日本映画もこのような新しい展開に踏み出すことで、映画としての時間軸を見事に使い切ることで、もっと飛躍する余地があることを教えてくれました。
2010/01/06(自宅)
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