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[コメント] ウォッチメン(2009/米)

「持つ者」と「持たざる者」の違い。
CRIMSON

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作未読の為、明確で強力な悪は出てこず、そしてそれを倒す一般的な話でないことに驚いた。この映画ではヒーローを筆頭とした一部のエリート(「持つ者」)だけがひたすら悩み、そして解決していく。世界はそうしたものかもしれない。だがもっと一般大衆(「持たざる者」)の苦悩も描いて欲しかった。悪人ばかりでなく、この世に折り合いをつけながらなんとかやっている人達だ。

映像は相変わらず格好いい。激しいコマ割で何をやっているか分からないアクションシーンが流行っているがごまかしている感は否めなく、この映画では300に引き続きスロー映像を交えながらちゃんと見せてくれることは嬉しい。また爆発シーンなどド派手なシーンが出てくるのも見てて迫力あり楽しい。

またDr.マンハッタンの無敵振りには驚かされるし、また笑わされる。格好もそうだが、ヒーローが存在する設定でありながら極力世界観をリアルに描いている中、一人マンガみたいだからだ(まあ原作マンガだが)。最後倒されたか?と思わせたら簡単に巨大化して復活するもんだから、もうギャグの世界だ。

ロールシャッハは風貌、声色からハードボイルド調で格好いい。最後まで自分の正義を貫くし、彼こそが「持たざる者」の声を一部代弁しているのだろう。これはコメディアンにも言える。おまえら(「持つ者」=一部のエリート)だけで決めるのではなく、「持たざる者」に真実を教えて彼らに決めさせるべきだ、と。ラストの決断は「持つ者」の傲慢ではないか、と。最後の手帳をどう使うのかは一般大衆に委ねられている。そんなものは役に立たない、と「持つ者」は言うかもしれないが。

最初に明確で強力な悪は出てこないと書いたが、ラストでは明確で強力な悪のDr.マンハッタンという存在が提示されることにより、世界は落ち着きを取り戻すところは皮肉なのだろうか?それとも「持つ者」に導かれざるを得ない「持たざる者」の弱さなのだろうか?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)もりっしー 甘崎庵[*]

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