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[コメント] チョコレート・ファイター(2008/タイ)

緻密に設計されたアクション連携とジージャーの軽やかでしなやかな身のこなしは、ジャージー男との対決においてとりわけ顕著なように、格闘アクションを「ダンス」に接近させる。その点で私には「格闘アクション」に接近したダンス・ミュージカル『掠奪された七人の花嫁』が想い起こされる。
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あんなに可愛らしい娘さんがこんなに壮絶なアクションを……!という驚きにこの映画の眼目があるのは衆目の一致するところだろう。私も、あんなに可愛らしい娘さんがこんなに壮絶なアクションを……! と思った。ジージャーが凄いのはむろんだが、大勢のやられ役たちが彼女と同等以上の技術を持っていなければ成立しないアクションであろうことは素人目にも容易に窺い知れる。タイ映画界におけるアクション/スタント俳優の層の厚さを実感する。

構成は昔ながらのヴィデオ・ゲームを思わせるものがある。一面をクリアーしたらちょっと息抜きがあってハイまた次の面、みたいな(「ブルース・リー的」と云ったほうがよいのかもしれませんが)。アクション設計の大まかな方向性についても、奥行きはあるがやけに抽象的(『キル・ビル』的?)空間である料亭(畳部屋)の一対多アクションは『ダブルドラゴン』、ラストのビルディングの壁面で繰り広げられる「平面」アクションは『スパルタンX』などをそれぞれ彷彿とさせる。だからどうした、という話でもないけど。

製氷工場・倉庫・食肉工場、それに今しがた述べたビルディングの壁面など、空間の特性を軸に据えて様々なアイデアを投入したアクション演出には感心するけれども、やっぱり私はスローモーションを好まない。「これ凄いアクションですよ! どうぞ見てください!」という気持ちは理解するが、実際にそれを云ってしまうに等しいことをするのはさもしいというか、粋ではない。現代映画はまだまだバスター・キートンから学びつくしていないと思う。むしろ、阿部寛の部下がジージャーの家に赴いたシーンで繰り広げられる銃撃戦や、床に倒れながらも拳銃を撃つジージャー母、刀を持った相手に容赦なく拳銃で対抗する阿部など、面白さの創出という点では銃撃アクション演出のほうがまさっている。

(評価:★4)

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