コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 今そこにある危機(1994/米)

ハリソン・フォードには「不屈の正義漢」みたいなイメージが似合う。でもここまで演じ上げたのは、なかなか凄いことなんじゃないか。
G31

 ジャックは何の分野か知らないが博士(ドクター)号を持つので「ドクター・ライアン」と呼ばれる。ドクターは医者の意味もあるから「病気ですか?」みたいなコルテス(ホアキン・ド・アルメイダ)のベタな笑えないシーンもあったけど。いずれにしても、本来彼はCIAの分析官で、「エージェント」ではない。なのに、各種いきがかりで現場に駆り出されるハメとなる、ってあたりが本シリーズのちょっとしたギミックな訳だが、本作の設定はその辺があまり描かれてはいなかったか。3作目(うち2作をハリソン・フォードが演じた)だからの省略とも取れるし、自らクラーク(ウィレム・デフォー)に会いに行くところなんか、続けて観た者からは彼の「成長」とも取れる訳だが、そうでもなければ危険好きの変なおっさんという印象か。まあ、何と言うか、正しいか正しくないかみたいなことに強いこだわりを持つカウボーイみたいなおっさんだ。映画の中では単純な正義感を振りかざす「ボーイスカウト」と表現されていたけれど。そんな正義漢な彼が駆け引きも複雑な外交・政治・軍事の世界で自分を貫く、ないしそのことによって事態を「正しく」解決する。そこが本シリーズの魅力というか、少なくともモチーフなのである。そのために、「大統領」まで狡猾な悪人と描くのは、やり過ぎとまでは言わないが、アメリカ映画には珍しい伝統だと思った。しかし今観ると、ジャック・ライアンが2〜3人いたら、トランプ前政権ももう少しマシな・・・これは単純な考えか。ただ要するに大統領は、公約に掲げた「麻薬対策」の成果が上がらないことに業を煮やし、と言うよりは、自分の殺された親友が麻薬取引に手を染めていたというスキャンダルを覆い隠す意図もあって、「麻薬問題」を米国の「今そこにある危機」と位置づけて、それによってアメリカの軍事的な関与の度合いを引き上げさせて、政治的な「成果」を演出することを狙ったわけだ。タイトルがそうだからと言って、この映画がそういう「危機」を描いた訳ではない。当たり前だ。むしろそういうフェイクに満ちた政治家の「言葉遣い」やその及ぼす影響や波紋、はたまたそんな中で個々人が信念を貫くにはどうすれば・・・このシネスケで、僕がこんなことを書かなきゃいけないのか。いや、好きで書いてるだけだけど。おっさんの戯言には終りがないのでこの辺で。

 あと一つだけ(←ほら)。コルテスと差しでほぼ対等に渡り合うライアン。ほんとはただの分析官なのにねと苦笑いしながら観ていると、扉1枚を挟んでクラークと押し引きなんてシーンに繋がる。こういうところでバランスを取りに来てるのだなと、ニヤリとしてしまう。

80/100(22/1/31BS)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。