[コメント] 湖のほとりで(2007/伊)
映像、色合い、構図は美しい。あるのどかな田舎で起こる殺人事件。関係者に聞き込みに当たる刑事。ゆったりと静かに聴き、静かな水に浸っていくように人々は自ら自分の、人間の弱さ、怖さを吐露していく。それは聴いている刑事も同じであった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ミステリーなんだけれども、いわゆる通常の刑事ものではない。のどかな自然に隠された人間の営みの哀しさ、怖さ、不思議さ、、。こういったものがほころびてもはや隠せなくなってくる。
真犯人は分かってくるが、最後には尋問したすべての人たちが真犯人と同様の罪を犯していたことに気づくのだ。人間が日常暮らすということは、それはすなわち罪深いことなのだ、と。それは刑事も同様であり、そして観客であるわれわれも同じ営みをしているのは事実で、すべての人間がある意味犯罪に手を染めていることに気づくのだ。
この説得力、この諦観を描きつくした演出力は筆舌に尽くしがたいものがある。立派だ。だが、肝心の被害者の気持ちが僕には一番シビアに伝わってこなかったので、何かこの映画は強さというものを持っていないのだということに気づく。彼女の諦観、人生の営みがこの映画の弱いところであり、ブレーキになっていると思う。秀作だけにそういう意味では惜しい作品だと思う。
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