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[コメント] ノーボーイズ、ノークライ(2009/日=韓国)

日常。出口が全く見えない無明の毎日。無法であるとは分かっていてもただ生きるためには組織にかろうじて繋がって生きている若者たち。そんな暗い目の若者たちにもかすかな灯りはあった、、。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







何か一瞬現代の出来事ではないように思った。云十年前の僕たちの青春時代であるかのような錯覚をこの映画を見ていて覚えたのだ。出口どころか入り口でさえないのが現代なのだろうか、そんな漂白する青春をこの映画は鋭く捉えている。

明日が見えないのである。灯りが見えないから明日を、今日を、現実を見ることが出来ない。現実は穢い。嘔吐感があるのみだ。だからといって、何かを変えようとする意思も持たない。ただ日々は流れる。明日は分からない。ただ耐える。

そんな青春は現代にも当然存在するのだろう。最後、若者たちがかすかに灯りを見たのは自らの分身としての家族だった。だが、実はこの部分が僕たちの貧しい青春と違う部分でもある。僕たちは家族から逃げようとしていた。

家族から離れることが自立であり、青春との離別だった。しかし、現代では家族ははじめから共有する羊水の一部として描かれる。家族回帰が当然のものとして描かれる。随分変わってきたなあと思う。外部への逃避と内部への回帰という時代の乖離がここにはある。

僕も人の親になっているが、別に子供は離れていても自立しているほうが親としてはありがたいと思う。別に一緒に生活などしなくてもいいのである。一緒にいようがいまいが子供は親を心配させるものなのである。

今までは云十年前に青春と決別したオジンのふとした独白です。

さて映画の方、妻夫木聡、結構いい。大柄でないところをうまくチンピラ風情に演技してる。韓国語もがんばって話す。彼が現代若者の悲しみを背負っている雰囲気は十分出せている。驚く。

ハ・ジョンウキム・ギドク監督の常連の俳優だが、妻夫木聡を受け止める役でさすが。さりげない悲しみの表現は秀逸。『チェイサー』で鋭く光っていた変質者の眼光は本作では哀しい鈍いものに変わっている。

こういう作品、好きだなあ。何度も見たい作品です。

(評価:★4)

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