[コメント] BALLAD 名もなき恋のうた(2009/日)
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とりあえず脚本的には上手く仕上げてるし、人物描写も良し。単体の映画としてはかなり評価を上げたい作品にはなってる。もしアニメなしにこれ観たら泣けてたかもしれん。 ただ、その泣ける要素が全部アニメからの引用部分だというのが問題点。結局ほとんど話を膨らませること無し、手堅く仕上げました。と言う感じだった。それが悪いという訳ではなく、むしろこう作らねば怒りたくなるのだろうが、それでもあんまりにもオリジナルを変えないと物足りなさを覚えてしまう。
一応それはそれとして、ここでは「アニメなら許せるけど実写だとどうだ?」と言う事でちょっとまとめてみよう。
例えば500年以上も経過してる紙なのに、思いっきり素手で触り、それでも全く崩れない手紙の材質とか、「きれいな湖」と称されるのが膝までしかない沼に過ぎないとか(きれいな沼ってのはイメージが悪いけど、水が澄んだ沼ってのはあり得なくない?)、廉姫演じる稲垣優衣の耳にはピアスの穴があるとか、戦場に窓全開にして車で突っ込むとか(普通槍とか投げられない?)、何より着物のまま馬にまたがる廉姫の姿には萎える(女性の着物は構造上それ不可能だから…できるけど、腰巻きを取り外さないといけないので下半身丸見えになる。女性は馬にまたがるのではなく、足を揃えて箱乗り状態でないとおかしい)。これらは「クレヨンしんちゃん」というアニメだからこそ、全てクリアできたものだが、実写に置き換えると全部ツッコミ所になってしまう。その辺は目を瞑らせるよりも、説得力ある説明でフォローして欲しかった。
それと、時間にしてオリジナルのアニメよりも40分も長くしている割に、付加要素がどうでも良いことばかりだったのも寂しい。主人公が真一ではなく又兵衛になっているとは言え、それだけ時間があるなら川上家の家族愛部分をもう少ししっかり描いて欲しかったし(最後の狙撃シーンで両親が真一を真っ先に助けに行って、体を盾にするシーンくらいはあっても良いんじゃない?あのシーンは又兵衛の方に行かせちゃいけないところだよ)、根本的に「誰が又兵衛を狙撃したのか」が一切抜けてるのも気になる。新しい部下を作る話なんてどうでも良いから、もうちょっと力入れる部分を変えて欲しかったところ。オリジナル版がある以上、本作はそこから一歩踏み出すことが求められてなかっただろうか?
とは言え、「流石実写」と思わせる部分もいくつかはある。例えばアニメでは難しい(特にノッペラした表情が売りの「クレヨンしんちゃん」では)表情で演技させるのは実写ならではだし、又兵衛の切ない思いもストレートでない分切なさが伝わる。みんなで食べる食事シーンなんかは素で旨そうに見えるので、やっぱり食べ物描写はアニメだとまだまだ難しい事を思わせる。
何より流石山崎監督。CGの使い方が実に良い。特に最後の合戦のシーンは、一見人海戦術のように見せつつ、相当にCGを駆使しているのが分かり、それらが自然に実写と融合してるのは名人芸とさえ思わせる。ここまで高いクォリティを低予算でやれるのは世界的に見ても山崎監督しかおらんだろう。
オリジナルの良さを崩さずに頑張ってくれてるので、これはこれで良しとすべきなのだろう。それと、アニメを知らずに本作で感動した人だったら、是非『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』は観て欲しい。
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