[コメント] 私の中のあなた(2009/米)
一瞬の永遠を切り取る眼差しが真摯な物語を成功させたGOODドラマ
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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感動ドラマの定番型ともいえる難病ものであるが、難病者であるソフィア・ヴァシリーヴァを軸にウエットに語るのではなく、その難病者を外側から見つめざるを得ない家族のそれぞれに私物語性を付与しえたことが成功に繋がった沈着な映画であった。まだ年端も行かない幼い子供が敏腕弁護士を雇って自らの人生を守るといった仕掛はトリッキーなドラマツルギーを匂わせもしたが、そうした映画的なあやういモチーフに引きずられることなく、あくまでフックとして使用するあたりはなかなかの大局観であったと評価できる。強いて言えば、ソフィアとトーマス・デッカーの恋愛シークェンス、アーロン・ジグマンの劇伴や劇中挿入歌などはトゥーマッチな感も否めないが、それでも複線的なエピソード構成によるドラマ展開や、キャスティングの妙による映画力で乗り越えたことが幸いしている。そして何より映画の叙情を生み出しているのは、人物に対する冷静にしてその逆温和なカメラの視線である。数多ある難病感動ものの中でも、これだけ物語の外側の視点を意識させるカメラの存在感は稀有である。前々作『きみに読む物語』では、実母ジーナ・ローランズを起用して認知症という題材にそのシネマツルギーの片鱗を見せたニック・カサヴェテスであったが、本作で彼の映画的視線の志向性は決定的なものとなった。確かな技術、独自のスタイルを得て次作が楽しみな作家である。
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