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[コメント] あなたと私の合い言葉 さようなら、今日は(1959/日)

冒頭の、女子社員について会話する3人の男子社員(一人は田宮二郎。まだ柴田吾郎時代)のシーンからぶつ切り科白と奇妙な間。しかし科白も演技も品がない。オフィスビルの外観や料理屋の看板の空ショット、短い科白の反復等はあるが、構図は縦横無尽だ。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 むしろ正面ローアングルというカットはワザと回避したのか殆ど見られない。或いは演出が難し過ぎるのか、手間(金)がかかり過ぎるのか。これも酔狂と割り切ってもいよいが、模倣とはとても云えないし、私はパロディとしても上手くいっているとは思えない。なぜか。敬意を感じないからだ。

 さて、若尾文子のぶつ切り科白回しが一番気に入らないが、それでも映画を支えるに足るヒロインとして魅力的に演出されている。京マチ子は大阪の料理屋の女将という設定でずっと関西弁を喋る。関西弁だとこの科白も嫌味がない。父親役の佐分利信は押し出しもいいが、酩酊演技や気の弱さの表現も矢張り実に上手い。あと若尾の許婚・菅原謙二の勤める会社の事務員で倉田マユミが登場するが、この脇役がなかなかいい。市川らしい底意地の悪さを露呈する演出がこういう場面では効果を発揮する。そして京マチ子の料理屋の馴染み客の役で出てくるのが桂小文治だ。これがいい。見事な台詞回し。本作で一番いい。また、若尾の妹役の野添ひとみは国内線のスチュワーデスで、ANAの飛行機の飛ぶカットがワンカットだけとってつけたように挿入されるのだが、この唐突感は映画らしい。

#他の配役やロケーション等について備忘。

・若尾に気のある夜学の学生を川口浩が演じ筋に絡んでくる。

・若尾は自動車のデザインをやっている部署で勤務している。日産だ。

・最初の大阪の風景は御堂筋だろう。三和銀行や富士フィルムの看板が見える。

船越英二が京マチ子の血の繋がらない兄の役。二人の鯛理屋の店は「与太呂」

・船越の母親は三好栄子。いたって常識的な母親役でつまらない。

・佐分利の友達は見明凡太郎。佐分利と見明が会うのは銀座の不二家。

・菅原がモーニングを頼む洋服屋は潮万太郎。大阪の飲み屋の女将は浦辺粂子

・「こだま」のカット。大阪駅。このあと、若尾と菅原が二人歩くのは、堂島川べりか?土佐堀か?バックは住銀本店のようにも見える。別れた若尾が歩くのは道頓堀で、このあたりの大阪の地理感覚はいい加減。(映画なんだから、じぇんじぇんOKやけど)

(評価:★3)

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