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[コメント] おとうと(1960/日)

日経新聞「私の履歴書」で有馬稲子さんの連載されている記事がとても気になりました。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







実は『』という谷崎潤一郎原作の映画を拝見して、そこでも同じコメントを書きましたが、時代を超越して有馬稲子さんと市川崑監督が不倫の関係にあったというのがとても衝撃的です。

芸能の世界ですから、多少のことはあっても驚きませんが、まさかこのお二人に縁があったとは、とても意外でした。

この市川崑監督の作品に有馬稲子さんが出演されている作品は1953年頃の2作。いずれもあまり印象に残らない作品ですが、ぜひ見てみたいと思わせるエピソードでした。

そして本作制作中にもこの不倫は続いていたようで、その不安定な感情がこの映画にも絶妙に演出されているような気がして、作品に対する思いも変化してしまいます。

姉と弟の関係が、市川崑監督にとっての有馬稲子さんだったのか、その辺は良くわかりませんが、尋常とは思えない姉弟の関係がとてもねちっこく描かれていますね。

この映画の中心には、虐げられた姉の存在が強く残ります。

そして弟を甘やかす父親。

家族全体を敵視して、信仰のみにすがろうとする継母。

いずれも不安定な関係の中で、姉と弟の関係だけに「許し」が示されます。

血のつながりがあるかないかは別にして、この家族の関係は「甘え」を許さない、極めてタイトな関係です。この緊張した関係の中で精神的に最も幼い弟が精神的にも肉体的にも崩れてゆく展開は、日本の家族制度への皮肉としか言いようがない残酷なお話になっていますね。

幸田文の原作で映画化された作品は『流れる』という成瀬巳喜男監督の名作がありますが、女性作家による女性の心理が強く表現されていて、女か母親か、という不一致を上手に展開しているように思いました。

この映画が海外で評価された理由はカメラにあると思います。宮川一夫さんのカメラは泥臭くしかも臭いを感じさせる強い印象を抱かせますね。

この時代の宮川一夫作品はいずれも強烈な印象があります。

すばらしい作品に仕上がっていましたね。

2010/04/12 自宅

(評価:★4)

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