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[コメント] あなたは私の婿になる(2009/米)

これを主演兼製作総指揮のサンドラ・ブロックの映画として見たとき焦点となるのは、中盤から結末部にかけてのブロックは冒頭部と比べて「女性として魅力的になっているか」あるいはもっと端的に「可愛くなっているか」だ。私は、なっている、と思う。だからこれは成功作だ。アン・フレッチャーに抜かりはない。
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**ネタバレ注意**
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演出・撮影(照明・レンズ・アングル・フィルタ処理等の選択)・演技・衣裳・メイキャップ・ヘアスタイリング、ときにはポスト・プロダクションのディジタル処理まで駆使して、女優を美しく、可愛く見せること。それは「映画」のひとつの在り方として正しい。このブロックが上映時間の進むにつれて右肩上がりに可愛くなっているかどうかは微妙だが(たとえば、鬼上司ぶりを見せる冒頭の数シーンでさえ彼女はユーモアを持ったどこかチャーミングな人物として演出されていますし、また私にとって最大の胸キュンポイントは彼女が「オカルト番組を見るのが好き」と告白するところでした。もちろん、演出もこのシーンを転換点のひとつとして仕組んでいたでしょう)、ともかくブロックは期待通りに手抜かりなく「変身」してみせている。

さて、コメディとしても水準以上のこの映画の「笑い」の主たる原理は、云うまでもなくブロックとライアン・レイノルズの「関係性の逆転」にある。と云っても、必ずしも単純に部下レイノルズが上司ブロックの優位に立つのではないというあたりが巧みなところで、親戚縁者の面前で両者が激しい主導権争いを演じる求婚エピソード披露のシーンは関係性の逆転に次ぐ逆転で笑いを生んだ、この映画の原理を最もよく体現したシーンでもある。挙式シーンの前後以降、映画は「笑い」から「感動」へと軸足を移す。個人的には不満を覚えるものの定石通りのこの展開は、つまり、両者の関係性が不断の逆転によって特徴づけられる「不安定」な状態から「安定」へ向けてベクトルを変えたことを意味している。安定は笑いを生まない。しかし感動には足る。

そして、やはり細部のアイデアの充実が嬉しい。男性ストリッパーのオスカー・ヌニェスで笑えるかどうかは個人の趣味に拠るところが大きいだろうし、ブロックが森でライアンズ祖母から祈祷(?)を強制され、勝手なダンスに発展するシーンなどもじゅうぶんにうまくいってはいないと思うが(もっとも、彼女のお茶目なところが最もよく出たシーンですね)、「犬が鷲にさらわれる」というアイデアにはたまげてしまう。「パワー・ハラスメントから始まるブロック主演の正統ロマンティック・コメディ」を企画するなかでこういうアイデアが飛び出してしまうというのが普通ではない。

(評価:★4)

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