[コメント] 母なる証明(2009/韓国)
熱せられてドロドロに熔けた巨大な鉄の沼みたいな映画。熱くて、怖くて、痛い。
『母なる証明』、すごい映画だった。すごすぎて感動することも忘れてしまうくらい、圧倒されてしまった。冒頭の母の踊りで、すでに思考が停止していた。
こういうすごい映画に出会ったとき、私は何を考えたらいいのかわからなくなってしまう。スクリーンの中では、母が息子の無実を信じて奔走している。映像は私の両の目を通して、私のなかのやわらかい部分にザクザクと刃を立てる。フィルムが映写機を軋ませる音がするようで、劇場全体に血の匂いが蔓延しているようで、私は座席に座っているのがつらくなってくる。
次々に明らかになってゆく殺人事件の真相。その映像の1秒、1秒すべてに、うっすらと踊る母が重なって見える。ロジカルな展開が薄膜の狂気にコーティングされた2時間、そしてラスト、そのすべてが熔解して私を痛く痛く焼く。
すごい映画を観た。歴史に立ち会ったような気がしている。
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