[コメント] 集団奉行所破り(1964/日)
『黄金の七人』系列としても単純に愉快な活劇だが、収束に至ってこれは反転せられ、真面目な仏教因果譚と判明する。お見事。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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賄賂の礼状で折られた折鶴。この重要な小物はいつ活用されるのだろうと待っているのにいつまでも使われず、ただ糸で天井から吊るされているカットが忘れた頃に写されるばかり。そしてラストショットもこれ。
しかし、観客はここに至ってハタと気づくことになる。本作の物語は全て、政争で滅ぼされた河内屋の復讐話、亡霊譚、仏教因果譚であり、元海賊の面々は(基本は金目当てだから義賊ではなく)知らずにこれに利用、参加させられていただけなのだ、と。
これにある程度自覚的だったのは里見浩太郎を逆ナンパする御影京子と佐藤慶、そして恩義を覚えている金子信雄だが、しかしその全容は知る由もなく、里見らに至っては傀儡でしかなかったのだった。一方、二人や三人犠牲が出ても、亡霊の河内屋は亡霊らしく知ったことではない。強盗実施のクライマックスはそれまでのホノボノ路線が一転ハードになり強烈だが、これも河内屋の記憶の再現に違いなく、金が見当たらないから内部文書盗んじまえという展開も河内屋が糸引いているに違いないのである。
いつから河内屋の霊はこれを仕掛けたのだろうと顧みるに、それはファーストカット、財布とともに礼状がスラれたシーンにまで遡るのであり、河内屋に商人の令状を盗まされていたのだった。ラストで倫理がなされたと確認した折鶴は、とても喜んでいるように見えた。
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