[コメント] アンヴィル!夢を諦めきれない男たち(2008/米)
被写体に対する愛とドラマティックな修辞、そのカットの切り取り方に豊かなリリックが生まれるGOODドキュメンタリー
ダスティン・ホフマンがこの作品に寄せるコメントの通り、ある種ホワイト・トラッシュとも言えるヘヴィメタというキーワードに括られがちな偏見的視点を、男の幼児性を大人の視線で賛美したひじょうにリリカルなドラマとして仕上がった爽快な青春中年映画である。確かにドキュメンタリーと声高に謳いながら、どこかドキュドラマ的な作為が見えないでもないが、監督でありかつての盟友でもあったサーシャ・ガヴァシのアンヴィルに対するシンパシーが強烈な印象として儚くも美しい人間賛歌として結実したことは、作品の完成度を強固なものとし、かつロマンティックな人生を自らの範とする人間であれば、老若男女を問わず胸を打つにはいられないであろう佳作である。紛うことなき創らずにはいられないという衝動に突き動かされたであろうこの筋の通った本作は、マイケル・ムーアのたまわるところの、「過去最高のドキュメンタリー映画」にも臆することのない熱い作品である。 映画にはこう芯の通った抒情が技術以上に欲されるところに豊かさが生まれる。とされながらもサーシャ・ガヴァシの巧さがこの作品を高らかに言わしめている本作は、稀なる良作である。
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