[コメント] カールじいさんの空飛ぶ家(2009/米)
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やっぱり言いたくなってしまうのは、CGキャラの演技のさせ方だろう。大げさに言えば、こういう体型の役者にモーションキャプチャーを施したような自然な所作。とりわけ静止させている部分のうまさには、ついつい物語世界から一時離脱しそこへ感心してしまう。また自然光の下での肌色の微妙な色調の美しさは見事。この表現力は絵画史において印象派がようやく苦心の末到達した光の表現に比肩するようなことがCGアニメ界に起こっているといっても過言ではないのでは?
斜めにスライスされた断崖の岩場の際でのめくるめくようなアクション、空飛ぶ冒険は早々に、冒険の大半が高地のこっち側から向こう側へを歩くというおかしさも気が利いている。「超人カール」となってしまうのも、まあ楽しいからこれでいいと思うし、もう少しイギリス風なニガみが欲しかったけど、自分の夢の原動力となった恩人との邂逅と決別や、「たかが家じゃないか」という視点なんかもおりこまれていて、とにかく良く考えて作られている。品質の高い作品だ。
ただ、一つひっかかるのが「エリーの気持ち」だ。彼女は冒険大好き少女の魂を最後まで失ってはいないのだと思うけど、成長とともに「冒険」<「カールとの家庭」であったはずの、子供が産めないという現実と折り合いながらその中で彼女がカールとの生活に見出そうとしていた幸福、大人になったエリーが大人の女性として望んでいた気持ちがこの旅とともにないというのがやっぱりさびしい。あっさり母親の心情が切捨てられたところから物語が始まる『ファインディング・ニモ』でも感じた違和感(あれよりはマシだけど)。旅はまぎれもなく彼女たちに祝福されていたけれど、彼女はこの旅に祝福されたのだろうか? ぼくたちはいつもヒロインたちに「いいわよいってらっしゃい」と言われるばかりで…ね。でも、「きっと彼女も喜んでくれたさ」という言葉が欲しいと思うのは、それ以上の甘えってことだな!
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