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[コメント] かいじゅうたちのいるところ(2009/米)

スパイク・ジョーンズのもつ幼児性への憧憬が主人公と同化するキュートでSO-SOなファンタジー
junojuna

 本作は‘今世紀最高の絵本’という称号をもつ原作を世界観とするだけあって、やはり、読む者の想像力を刺激する豊かなメタファーを通し、とても滋味深い人生への気づきを与えてくれる教訓的な物語でもある。その意味においては、これまで盟友チャーリー・カウフマンとのタッグによる一連の作品群(『マルコヴィッチの穴』、『アダプテーション』)で、哲学的娯楽性を存分にアピールしてきたスパイク・ジョーンズであるが、本作においても、そうした寓意に満ちた物語を、人間性への視点を失うことなく瑞々しい感性で描くことに成功している。しかし、たしかにそうしたドラマに込められた意味を見逃してはならないのだが、本作に炸裂している魅力とは、スパイク・ジョーンズのイタズラ心あふれる幼児性が、主人公の8歳の少年マックスに憑依することで、類まれなおとぎ話を昇華させているという点にある。主人公マックスを演じたマックス・レコーズのやんちゃな男の子という熱演?もさることながら、「かいじゅうたちのいるところ」で自由奔放にやんちゃしたかったのは、きっとスパイク・ジョーンズあなただったのでは?と思わずにいられない楽しさがある。幼児退行的ではあるが、その何物にも縛られない飛翔力こそ、どこまでも行ける想像性の醍醐味であるし、作家スパイク・ジョーンズの私性が裏打ちされた主人公の幼さへの憧憬が、この映画の魅力を一際輝かせているのは感動的である。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)プロキオン14[*]

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