[コメント] インビクタス 負けざる者たち(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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今たまたま「怒らないこと」というスリランカのお坊さんが書いた本を読み終えまして、そしてこの映画に出会ったわけですが、いずれも言わんとすることが重なっておりまして、ようするに「怒りは怒りを生む」ということですね。それをラグビーというスポーツのぶつかり合いにフィードして映し出しているところがすごいなー。
マンデラ大統領のことは新聞レベルでしか知りませんが、就任時の混乱は大変だったんでしょうね。就任直後に警備を黒人だけでなく白人にもさせようと強引に指示を出すマンデラは、前政権を全否定するだけでは、この南アフリカという国の本当の統一はないと最初から考えていたんですね。
そして国を代表するラグビーチーム。ボカですね。このチームのほとんどは白人です。でも一人だけ黒人がいるんです。しかもなかなか勝てない。そんな弱いチームに嫌気がさしてチーム名とユニフォームを変えようと協会が決議する時、マンデラはそこに乗り込んで止めさせます。これ本当にあったお話なんですよね。すごいことですね。オバマさんにもできない芸当ですよ。
挙句の果てに代表チームに子供のコーチをさせたり、練習場にヘリで登場したり、やることなすこと無謀な行為のように見えますが、それはこの国の国民が一つになるための演出だった、と考えると、マンデラ大統領は最高の演出家だったということになりますね。
そんなマンデラさんも家族とは絶縁状態だったようですね。娘にもあまり良い印象を与えていません。妻とも離れ離れのようです。そんな孤独に耐えながら、南アフリカをいう国を肌の色で判断しない国に作り上げていったということが大変良くわかるお話でした。
実際にあったお話というのは、映画とかドラマにすると陳腐になりがちですが、クリント・イーストウッドはこの手法が大変得意ですね。『チャンジリング』にしても『父親たちの星条旗』にしても『硫黄島からの手紙』のしても、いずれも実話なんですよね。上手ですねぇ。
主演のモーガン・フリーマンとクリント・イーストウッドは、多分『許されざる者』からの付き合いでしょう。その後数々のイーストウッド作品に出演してきた彼ですが、『ミリオンダラー・ベイビー』ではアカデミー助演男優賞を獲得。そして本作が久々の主演映画となりました。上手ですね。素晴らしい演技。マンデラさんを生き写しにしたようで、あのまっ白い歯を見せて笑う姿にはジーンとしてしまいます。
この映画は世界がグローバル化すると同時に格差社会を生み出していることも重なって、このまま世界が進むとハイチの震災のような事態になるたびに多くの犠牲者を地球が生み出してしまうことのアンチテーゼに思えました。
お話は単純です。
しかしながら、このドラマを見て、怒りの矛先の納めようとする力が働くところまで、世界は本気で進むことができるのでしょうか。
この映画の感動は、世界に向けられたものだと思いますね。
もう感動で最初から最後まで涙が止まりませんでした。
最後のラグビーの試合は見ごたえがありましたねー。ぜひ映画館で見たい1本でしょう。ラグビーの試合中に絶対入れないような位置にカメラが入り込みました。
ところでラグビーを題材にした映画ってありましたっけ?初めてじゃないですかね?
2010/02/13(大泉)
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