[コメント] 食堂かたつむり(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
クレジットに「原作者」ってあってアレ?とは思ったのだけど、小説に原作があるような話だとは思えなかった(映画オリジナルだろうと思った)ので、ちょっと意外でしたね。映画を見終えた後は、こんな風に思ったのですよ。
<口がきけなくなって料理がうまくなったのなら、再び口をきけるようになったら、元に戻ってしまうのでは?>
要するに、日常生活において、他人がおいしそうに食事をとっているのを見てこちらまで幸せな気分になることは確かにあるよと。だがそれはリアルな反応を見た場合の話であって、役者が<おいしいという芝居をしている>ところを見せられても、そういう気にはならんよねえと。だってそれは、<おいしい>ということの表現ではなくて、<人がおいしいと感じている>ことの表現なだけなのだから。この映画の主目的が<もし本当にこういう料理があったなら、ぜひ私も食べてみたい>と観客に思わせることだったとすると、この作品はただの失敗作だなと(少なくとも私にとっては)。
だが、あの変な形をした山や、ユルくて奇妙な人間関係のある、里の中で作ったからこそ、柴咲コウの料理には、不思議な魔力が宿った、ということかしらと思い至る。
としても結局のところ、あの変な里の(映画上の)造形力に乏しいのだ、ということになってしまうのだけれど。少なくとも、スーパーに買い物に行ったら高校時代の?同級生がレジ係をしていたとか、その彼女の父親が市役所を辞めて潰れそうな喫茶店を経営してる、といった<ディテール>は不要だったのでは?
映画作りには、原作の中のノイズ部分は除去し、足りない部分は勝手に補う、くらいの傲慢さはあっていいと思う。言葉で表現できることやできないことと、映像で表現できることやできないことは、違うのだからね。
私の座席の斜め後ろに(たぶん)おばさんグループが座っていて、映画の最中にも感想をボソボソ言いあっていた。それも「家の中で子豚ちゃんを飼うなんていいわね」だの「この子豚ちゃん可愛いわね」だの他愛ないことばかりで、耳障りなことこの上ない。それが、余貴美子が「やっぱエルメス(子豚)食べよう」と言った瞬間から、ピタッと止んだ。こういう毒気は良いですね。
65/100(2010/06/20記)
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