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[コメント] 騎兵隊(1959/米)

本作も子供の頃から何度も見ているが、フォードの西部劇の中では下位に置いていた。しかし、見直してみると、やっぱり傑作、最高じゃないか。
ゑぎ

 何と云っても、物を投げる、蹴飛ばす、ひっぱたく、のオンパレード、特に、蹴っ飛ばす所作の多いこと多いこと。これらは勿論、ジョン・ウェインに多いのだが、彼だけでなく、ほゞ全員、ウィリアム・ホールデンは当然のこと、他の兵士や、ヒロインのコンスタンス・タワーズにまで及び(保安官のラッセル・シンプソンに掛かっていた縄を取って、地面に投げる)、全部で100か所ぐらいはあったのではないかと思われるぐらいだ。

 南軍の兵站の要衝−ニュートン駅の鉄道設備を破壊し、帰還することが任務。往路復路とも、良いエピソードが目白押しだが、やはり、ニュートン駅近くの、ホテルのバーだろうか、ウェインが鉄道設備の爆破完了の報告を受けるところから始まるシーケンスは特筆すべきだと思った。実はこのシーンの細部も覚えていなかったのだ。伝令が乗馬したまゝ建物に入って来て、完了した旨報告するのだが、ウェインは、報告者を馬上から引きずり下ろし、尻を3回ぐらい蹴りながら、表に放り出すのだ。さらに、同席していた部下の大佐−ウィリス・ボーシェイまで叩き出してしまう。それは、ウェインが鉄道保線員から徴兵されて叩き上げで指揮官にまでなった人だという前提があり、鉄道を破壊することに忸怩たる思いがあるからだ。さらに、バーのカウンターでメチャクチャ飲み続け、看護で疲れ果ててやってきたタワーズとウェインとの会話になる。この会話シーンも、ウェインが、グラスとウィスキーボトルを、カウンター上に積み上げたグラスのピラミッドに勢いよく投げることで終結する。この一連の情動の定着は狂気的なレベルじゃないか。

 また、尺で云うと、復路(帰還)の場面は3分の1ぐらいだが、こゝに、タワーズの召使ルーキー−アルシア・ギブソンが狙撃されるシーンや、南軍の士官学校の少年兵たち(年長者で16歳という)が整然と進軍してくるシーン(おたふくかぜの少年2人の見せ方!)、ダンカーという兵士−ビング・ラッセルカート・ラッセルのお父さん)の負傷した足を切断する場面などがあり、ウェインとホールデンの殴り合いシーンも盛り込まれ、エンディングをむかえる、という畳みかけも満足度が高い。昔見た時は、ラストが唐突過ぎて物足りないと感じたが、この途中感のあるエンディングも、却ってたまらない魅力だと思ったのだ。そして、終盤、ウェインとタワーズの関係が変化していく(お互いに優しい気持ちを持ち始める)場面や、ラストシーンの劇伴として『捜索者』のクレジット開けシーンに流れているのと同じメロディ(ロレーナ)の断片が流れているというのも、今回知った。このメロディもたまらない。

#備忘でその他の配役等を記述します。

・冒頭のグラント将軍役はスタン・ジョーンズ。本作主題歌を作ったのも彼。

・ウェインの腹心の曹長、ジャック・ペニックも冒頭の出発前シーンのみの出番。ペニックの代わりとして休暇中に連れ戻される曹長は、ジャドソン・プラット

・ホールデンの助手ホッピーはO・Z・ホワイトヘッド

・ウィリス・ボーシェイは政治家。ウェインと同じ大佐だが、ウェインが指揮官。

・部下の少佐はウィリアム・レスリー。軍曹はフート・ギブソン

・途中から平服を着て斥候を務めるのは、ケン・カーチスハンク・ウォーデン

・ラッセル・シンプソンと一緒に出てくる南軍逃亡兵の2人は、デンヴァー・パイルストローザー・マーティン

・ホールデンの友人の南軍将校はカールトン・ヤング

・少年ばかりの士官学校の校長−ベイジル・ルイスデール。進軍中の息子を家に連れ戻す母親はアンナ・リー

(評価:★5)

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