[コメント] 孤高のメス(2010/日)
まさに「手編み」のような映画
劇中で堤真一が語る「オペとは劇的なものにあらず。手編みのようなもの」という言葉を証明するがごとく、冒頭からクライマックスに至るまで、ヒロイックでもなく、ドラマチックでもなく、ただただプロフェッショナルな人々の戦いを丹念に描いている。その点にまず好感がもてる。
人物造形もよい。冒頭30分で堤真一演じる当麻という人間が「信のおける人物」だということが、“演歌に関する物議”という何とも医療ドラマらしからぬテーマによって照射されるシークエンスはお見事。素晴らしい。
また、最近無駄に画面を揺らして臨場感を醸そうとする船酔い映画が多い中で、小津先生を彷彿とさせる定点撮影は非常に計算が行き届いており、手間暇を惜しまない製作者たちの意気込みが見られる。
全体としてよくまとまっていて、老若男女、様々な人が自分なりの視点でもって観賞できる懐の広さもエクセレントだ。個人的に僕は映画にドラマチックさを求めているので、どうしても点数が低くなるが、本作が佳作であるという点については、異論の余地はない。
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