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[コメント] 必死剣 鳥刺し(2010/日)

大傑作。役者の一挙一動、画面の隅々に到まで、全シーンが見事に統率されている。実に端正な映画だ。ある種の均整美、品の良さまで備わっている。もっと多くの人に観てもらいたい。
赤い戦車

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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例えば冒頭の演舞から豊川悦司関めぐみを一突きで刺し殺すまでの一連の動作。とても慎み深く、奥ゆかしい殺人の動作で美しささえ感じる。こうした「奥ゆかしさ」が全編を貫いており、非常に心地よい。

そうして注意深く構築された均整美。その均整美は吉川晃司との殺陣で頂点を迎える。二人の対決は恐ろしいほど美しく、もはや芸術といっていい。固唾をのんで見守った。

その「美」を一気に破壊しつくすのがクライマックスの壮絶な殺陣だ。数多くの殺陣を観てきたが、ここまで醜いものは初めて観た。ここには美しさのかけらもない。ただひたすら生き延びようとする「必死さ」だけがある。

満身創痍で顔面蒼白になりながら鬼の形相で戦う豊川悦司。そして繰り出される「必死剣」。古今の時代劇屈指の名場面だ。

全体的にとても静謐な印象の映画で、美術も堪能。素晴らしい作品だった。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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