[コメント] 悪人(2010/日)
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老いた祖父母を抱えてボロ屋に暮らす青年、国道を通り過ぎる車とお客さまを、閉じた世界からただただ眺め続ける女性、他人の身勝手に振り回され続ける老人たち、これらの経済的・社会的弱者が社会の規範から逸脱していく姿を見たとき、沸き上がる感情は何なのでしょう。匿名の場なので正直に言いますが、私は自分が多少マシな生活をしていて良かったと感じてしまいます。少なくとも今のところは彼らのような状況に追い込まれていないことを、両親だとか自身の運だとかに感謝しました。観賞後に感じる満腹感は、「他人の不幸は蜜の味」の蜜によるものだっと思います。他の観客の方々は、こういう感情を抱かないのでしょうか?本当に?
社会底辺の姿や人間の厭らしさの描写に妥協はなく、それらと対等に向き合う李相日監督の真摯な姿勢が感じられました。しかし、“監督−現実”から“観客−現実”の関係に進んだとき、少なくとも私は前述したような非常に嫌な感覚を抱いてしまいます。社会派作品の難しさを感じる作品でした。
冒頭から落ち着いた映像がひたすら続いた後、映し出された灯台からの景色の鮮やかさが素晴らしかったです。そしてどのキャストも好演する中、一番の熱演は満島ひかりでしょう。車の中で演じたあのウザったさは、未だかつて見たことのないものでした。ただ、岡田将生やマスコミの造形がいかにも過ぎてげんなりさせられたのが残念。死んだ満島ひかりが雨の中に現れるシーンも、やり過ぎな感じがしてかなり引きました。あと、自身の尊厳と生活を傷つけたくないという身勝手な動機で女性を殺害した主人公は、情状酌量の余地のない悪人だと考えます。
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