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[コメント] 恐怖(2009/日)

「見る」という行為は不確かさを孕む、というより、視覚を取り巻く環境や認識・願望の作為が多分に作用している、一歩進んで、第三者による「捏造」かも しれない、あるいは捏造ですらなくそもそも・・・?という電波的な観察を起点にした作劇。それらは「確かに見える」とはどういう状況なのかというテーマを突き詰めた結果、今見えると思い込んでいる世界をぼろぼろに破壊する視覚体験である、といえば格好はいいけど・・・
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







理屈で撮った映画の悪い部分が全面に出てしまい、既視感が甚だしい。

監督は『インランド・エンパイア』を観てそうな気がする。冒頭の映写機のアップや照射される光で構えてしまう私などはそう思う。多分テーマも一部近似しているし、「赤い光」もそれっぽい。ただ、あの「メタ地獄」の足下には及ばないと思う。

影=虚像=幽霊=分身を世界に氾濫させて、その中に人を、観る者を取り込んで現実認識を破壊しようとする映画って、割と好きなのですが、話がそれ以上進まなかったり、少なくとも画に迫力がなかったりすると、ちょっとがっかりしてしまう。煽尼采さんが指摘されているままですが、黒沢清に撮ってほしい題材だし、吹っ切れ方も押井守の説得力に及ばないと思います。

監督に「ほらほら、好きでしょ、こういうの。え?どうなんだい?」と迫られている気がして、「ええ、好きです」とは答えますけども、どうも煮え切らないものを感じて、もどかしい思いにとらわれる。面白くないってことはなかったんですが。例えば、登場人物でも観客でない誰かへ視線を向けて、あなたはなにをみてるの、とリエコが問うシーン。

(評価:★3)

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